時代にそった手法を現場に浸透できた理由

マーチャントの説く方法で、見事に戦略を現場に根付かせた企業の例をあげよう。カリフォルニア州レッドウッドシティに本社を置くグローバルソフトウエア企業、オープンウェーブは、数年前、岐路に立たされていた。会社の原動力になっていた無線アクセス・プロトコル・ソフトが、インターネットに直接アクセスするデバイスが普及したことで、急速に時代遅れになっていたのである。同社は知財市場に参入する必要があった。

以前は、戦略は役員室で経営幹部チームによって策定・承認されてから現場に下ろされていた。法務責任者で、新戦略構築の責任を負っていたブルース・ポージーと同僚たちは、前述のマーチャントの助けを得て異なる手法をとった。組織のすべてのメンバーにとって透明性が高く、できるかぎり多くの社員を参加させる手法である。

わずか3カ月余りで、あらゆる部門から集まった30人の社員が戦略案を生み、組織の他のメンバーに評価してもらってから戦略を選定した。現場の社員はアイデアを出したり、何がうまくいき、何がうまくいかないと思うかを説明する機会を与えられた。「その戦略はCEOだけのものではなく、みんなのものだった」と、ポージーは語っている。

(翻訳=ディプロマット)