入試は大きく変えた。専願しか認めなかった募集要項をあらため、併願を可能にした。合格したら納めなければならない入学一時金を3万円に抑え、受験者の負担を軽くした。3万円にした理由を聞くと「どんな家庭でも、なんとか捻出できるぎりぎりの額。感覚で決めた」。
そして、共学化。女子校だったザベリオ高校に男子を迎え入れた。県立王国・会津のマーケットになかった「男子の私立併願校」に多くの受験生が反応。学力の高い生徒が入学しはじめている。募集をかけたところ、全国からやる気のある教員が集まった。体制は整いつつある。しかし、「ここまでぜんぶうまくいった。でも勝負はこれから」と冷静だ。
「県立に落ちたけど、結果としてザベリオに入ってよかった。そう思わせる学校でなければいけない。やるべきことはまだまだある。ザベリオは、もっとよくなる。安心してほかの方にお任せするには、もう少し時間が必要かな」
2011年の夏、またがんが見つかった。抗がん剤の副作用で指先の皮膚が割れる。歩くのもままならないときがある。最近の抗がん剤はタイプが豊富で、「頭がクリアであること」を第一条件に薬を選んでいる。だからつらい副作用も受け入れている。「担当医にも、あなたから仕事を取ったら、何もないからねと言われていますよ」と笑う。
大ベストセラー『置かれた場所で咲きなさい』の著者、渡辺和子は恩師である。修道女である渡辺から、こんな言葉をもらった。
「命というのは、病気でなくなるのではないと思う。あなたは人生をまっとうした、この世ではもうやることがない、だから天国に帰ってきなさいと神様がおっしゃったときになくなるのではないか。神様に誇れる自分の履歴書を準備しなさい。あなたは今まで、自分のためだけ、自分の家族のためだけに生きてきたのではないか。人のために尽くし、履歴書がきれいに書けたなら、そのとき、天国に帰る時がくるでしょう」 (文中敬称略)