ついに国有企業にもバブル崩壊の余波が
11月19日、中国製紙5位の山東晨鳴紙業集団(シァンドン・チェンミン・ペーパー・ホールディングス、以下、チェンミン・グループ)は、全生産能力の約7割を止めたと明らかにした。大手製紙企業の操業縮小は、不動産バブル崩壊処理の遅れや地方政府の財政悪化に加え、一部の国有・国営企業の業績低迷の懸念が高まっていることを如実に表している。
ここへきての政府系企業の収益力の低下は、今後の中国経済にとって無視できないマイナス要素だ。7月、第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)で中国政府は、国有企業などの設備投資を増やし、経済成長率の向上を目指す方針を掲げたものの、その政策が実際の効果を生み出していないからだ。
足許の中国では、IT先端分野をはじめ民間企業の業績も悪化している。賃金引き下げやリストラなどから、労使対立は激化しストライキも増えた。中国では、若年層を中心に経済格差などへの不満は増大傾向だ。
中国政府の経済運営の限界を示している
当面、中国政府は、国有企業などの設備投資増加を優先する方針のようだ。それに対し、一般庶民の不安は高まっており、支出を減らし貯蓄を優先する節約志向は続いている。この状況が続くと、内需が増えて景気が下げ止まることは容易ではない。これからも、企業の収益は減少傾向が続き、雇用が厳しくなり、デフレが進行するリスクは上昇傾向をたどる可能性が高い。
チェンミン・グループの全能力の7割停止は、中国経済の厳しさを確認する重要な事例だ。端的に言えば、中国政府の経済運営の限界を示す出来事といってもよいかもしれない。
1958年にチェンミン・グループは地方政府(山東省寿光市)傘下の製紙企業として発足した。1988年以降、改革開放が加速する中、同社は生産能力を拡張し始めたといわれている。1993年以降、国有制から従業員に株式の一部を付与する混合所有形態への移行が進んだ。
当時の経営陣が生産性の向上を重視し、また債務問題を抱え破綻状態にあった同業他社を買収して事業拡大を推進した。同社の成長は加速したようだ。2024年の中間レポートによると、筆頭株主はチェンミン・ホールディングス・カンパニー(国有企業)だ。