藤原隆家とはどんな人物だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「道長憎しのあまり暴走し自滅した兄・伊周とは異なり、隆家は国家に貢献したことから、その家系は明治維新まで続いた」という――。
NHK大河で描かれた安倍晴明の予言の意味
目を負傷して出仕もできないほどになっていた藤原隆家(竜星涼)が、宋出身の眼病の名医がいるという大宰府への赴任を希望し、臨時の除目(諸官職を任命する儀式)で望んだとおりの大宰権帥に任ぜられたのは、長和3年(1014)11月のことだった。その模様はNHK大河ドラマ「光る君へ」の第43回「輝きののちに」(11月10日放送)で描かれた。
兄の藤原伊周(三浦翔平)と隆家の兄弟は、「光る君へ」の登場人物のなかでも、かなりインパクトが強い存在だった。
叔父である藤原道長(柄本佑)のライバルだったが、道長の長兄、道隆(井浦新)の死後、花山法王(本郷奏多)を弓矢で射かけてしまう事件を起こして、2人とも流罪に。それに際しては、一条天皇(塩野瑛久)に入内していた姉妹の定子(高畑充希)が、衝動的に出家する事件まで誘発し、道長が権力を固めるきっかけになった。
だが、伊周と隆家の兄弟を同列にあつかうことはできない。第20回「望みの先に」(5月19日放送)ですでに、陰陽師の安倍晴明(ユースケサンタマリア)が道長に、「隆家様はあなた様(道長)の強いお力となりまする」といい、伊周については「あなた様次第でございます」と伝えていた。第46回「刀伊の入寇」でいよいよ、晴明の言葉の意味が解き放たれる。