勉強のプロでも「スマホ断ち」は難しい
今回話を聞いた東大生から聞こえてきたのは、「スマホの取り扱いに苦労した」とする声ばかりでした。「『スマホばかり見ていても仕方ない』とわかっているのに、コミュニケーションのためとSNSをチェックしてしまう」「ネットサーフィンが楽しすぎて、いろいろなページを渡り歩いて何時間も使ってしまった」など、勉強のプロである東大生ですら、「勉強の邪魔になる」とわかっているのに、自らの意志でスマホの利用を制限することが難しかったことがわかります。
だからこそ、彼らはアプリを削除したり、スマホ自体の利用時間を制限したりして、「そもそもアクセスが不可能」な状況に身を置きました。意識的に自らを縛り切れないのであれば、誘惑の根源自体を消去する必要があることを彼らは知っているのです。
紙媒体の勉強で事足りるのであれば、そのほうが心を乱される確率は低下するでしょう。これは筆者の実体験に基づく私見ですが、紙の参考書による学習でも、偏差値60~70程度まで押し上げるには十分効果的です。であれば、わざわざ遊びを誘発しかねないスマホを無理に活用するのではなく、いっそ封印することも有効であるといえるでしょう。
もしどうしてもスマホで勉強したいのであれば、「電車内では暗記アプリを活用する」などスマホを使用する時間帯、場所、目的を決めるとか、勉強アプリを配置したページにはSNSやゲームなど集中を妨げるアプリを置かないといった厳重なルール策定が必要になりそうです。
「スマホで勉強」は危険と隣り合わせ
「スタディサプリ」など、高品質で低価格な映像授業媒体が出現したり、「モノグサ」「英語アプリmikan」など使いやすい暗記アプリが出現したりと、デジタルデバイスを活用した学習環境は確実に整えられてきました。一方で、スマホやパソコンには勉強とは関係ないアプリを導入可能であり、常にそれらに誘惑される危険と隣り合わせとなります。
今回話を聞いた東大生たちは、受験生時代に「スマホの学習ツール化」の過渡期を過ごしました。小中学校時代は紙とペンで勉強していた世代ですから、今後10年で意見は大きく変わる可能性もあります。とはいえ、学習手段に貪欲な東大生30人のうち、一人も「受験では積極的にスマホを活用すべき」という意見がなかったことに、答えは出ているのかもしれません。