「損切り」のほうが長期的には正しい時もある

株とポーカーの共通点:理不尽に負けないメンタルが必要

【木原】ポーカーをやっていると正しいプレーをしたのに負けてしまうだけならまだしも、雑なプレーをする対戦相手がラッキーを引き続けて独り勝ちするような理不尽な場面にも遭遇します。こういうときには経験豊富な人であっても腹を立てたり、イライラしたりすることはありますが、強くなるにはそういう理不尽にも慣れないといけませんね。

【エミン】FXでも、買った途端に下落して慌てて損切りしたのに、そのとたんに上がるという往復ビンタを食らうというのはよくあるよね。逆に、損切りできずにオロオロしているうちに値を戻してきて助かった、っていうパターンもある。でもこの場合は、損切りして損失を確定させたトレーダーの行動が圧倒的に正しい。正しい行動をしたのに、損を確定させられるんですから、理不尽ですよね。

【木原】こういう場合、損切りできずにたまたま助かった人は、自分の読みが当たったと思っちゃうんですよね。ポーカーでもよくありますよ。チップを大幅に減らしてしまった人が無茶なプレーをして、運良くチップを回復させるパターンが。でも、49対51の49側を待つようなプレーをする人はトータルで負けるんです。

【エミン】こういうときこそ、焦って取り戻しに行くのではなく、より慎重にリスクを抑えるべきです。正しい判断をしたのにたまたま負けてしまったというなら、時間が解決してくれますから。

次の判断に影響を与えないメンタル構築が必要

【木原】本来は勝っているときなら少しリスクを上げてもいいし、負けているときは慎重になるべきなんですが、逆をやっちゃう人が多いんですよね。

【エミン】一か八かみたいな大勝負に出て損失を取り戻そうとしてしまうんだよね。「これで損失を取り戻す、そうしたらもうやめる」なんて言うけど、そういう人に限って取り戻したとしても絶対にやめない。

【木原】その日はやめても、次の日は知らん顔して帰ってきますね(笑)。こればかりは経験を積んで、スキルを上げていくしかありません。正しく勝つ経験を積み上げていくことで、ひとつの不運な負けに執着したりムキになることが減り、メンタルも安定しやすくなると思います。

エミン・ユルマズ、木原直哉『「確率思考」で市場を制する最強の投資術』(KADOKAWA)
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【エミン】損切りできずにいるうちにたまたま助かった人も、ポーカーで無茶なベットをして勝った人も、間違った成功体験を積んでしまったことになるので、同じような局面が来たらまた同じことをしてしまいます。どちらも、いずれは大敗して退場させられることになります。

損切りしたトレーダーやフォールドしたプレーヤーは、そのときは損失を確定させることになるけれど、この正しい行動を続けている限り生き残ることができます。

勝ち負けにとらわれてプロセスをないがしろにする人は、遅かれ早かれ退場させられるんですよ。正しく負けたなら、そこは深く考えてはいけないし、次のトレードで損を取り戻そうとしてはいけない。そういうこともあるのだと受け流して気持ちを切り替え、次の判断に影響を及ぼさないようなメンタルを維持することが重要です。

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