米大統領に返り咲くことが決まったドナルド・トランプ氏。新政権の政策で日本はどんな影響を受けるのか。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「経済面では米中摩擦により中国依存度の高い日本の製造業が失速するリスクがあり、政治面でも対中政策の方針によっては東アジアの紛争に日本が巻き込まれるおそれがある」という――。
トランプ政権は日本経済に吉と出るか凶と出るか
ドナルド・トランプ氏が米国の次期大統領に選出され、2025年1月20日に就任することとなりました。選出直後では、2度目のトランプ政権の経済政策に期待して、NYダウが1500ドルを超える大幅高となりました。
減税の継続などの景気刺激策や財政の拡大予想から、現状2%台前半のインフレ率が再び高まるという懸念からドル金利が上昇し、それにともないドル・円レートも3円ほど円安に振れ、154円台に上昇しました。この原稿を書いている時点では152円台です。
トランプ氏の選出直後に市場は好感して反応したわけですが、トランプ再登板で日本経済には懸念もあります。
ひとつは、中国との関係です。選挙期間中に中国製品に60%の関税をかけるとトランプは発言していました。大統領就任直後にすぐに関税引き上げを行うかどうかは不明で、トランプ氏特有のブラフの可能性もありますが、中国政府や中国製品に対する風当たりがバイデン政権時よりも強くなることは明らかです。中国経済への依存度が大きい日本は心配です。
トランプ氏が前回大統領だった時期の経済情勢が大いに参考になると考え、今回の原稿ではそれらを振り返りながら、次期政権での経済運営や日本への影響を考察してみます。