日銀短観からは違った側面も見える

株価は、先に見たように比較的堅調でしたが、前回のトランプ政権時には日本経済に違った影響も与えています。前述した2019年の日本の株価の下落とも関係しています。

日本経済は米中摩擦の影響を大きく受けたのです。日銀が3カ月に一度、企業の景況感を調査している「日銀短観」を見ると、そのことが顕著です。この調査は、景況感が「良い」と答えた企業のパーセントから「悪い」と答えた企業のパーセントを引いたもので、中間的な答えも認めているので、私の感覚では「20」を超えていると、景況感はかなり良いと言えると判断しています。

【図表】日銀短観業況判断
筆者作成

前回、トランプが就任した2017年の最後の日銀短観(12月調査)では大企業製造業は「25」、翌年2018年の最初の3月調査では、「24」とかなり良い数字でしたが、米中摩擦が激化した2019年は大幅に下落しており、12月調査では「0」まで数値が下がりました。この年に米中摩擦の影響が一気に出たのです。

比較のために大企業非製造業の数字を図表2に載せましたが、こちらは「20」を超えた数字が続き好調でした。米中摩擦は非製造業にはそれほど影響がなかったのです。

一方、その後コロナの影響が出はじめた2020年3月調査以降では、大企業製造業は「マイナス8」「マイナス34」と急速に悪化しました。非製造業も同様に悪化しました。

その当時に比べて現状の中国経済は、コロナ対策のための過剰生産と不動産不況のために、大幅に減速感を強めています。そういった中で2025年1月にトランプ政権が発足するのです。

現状の米国経済は実質GDPが9四半期連続で拡大するなど比較的堅調で、ソフトランディングすると私は考えていますが、中国経済はある意味「重症」です。

それがさらにトランプ政権の政策で下押し圧力がかかります。米国のみならず、中国経済から大きな影響を受ける日本経済、とくに製造業の失速が心配です。

また、すぐではないと思いますが、トランプ氏は日本を含めた海外からの製品に10~20%の関税を課す方針、といった報道もあります。

実現すれば、当然、日本経済には大きな悪影響が出ます。関税は米国の消費者にも悪影響を与えるのですぐには導入しないと思われますが、トランプ氏の動きは読めない部分もあります。トランプ政権による米国内の景気刺激策などは日本経済や現地進出の日本企業にもプラスの面もありますが、日本経済に不利なことが起こる可能性も小さくありません。