「病気じゃなくて個性だよ」「できることもあるよ」
一方で、処理速度の指標は相対的に低いという結果が出ていました。つまり、息子は大量の情報を脳内に一時的に入れることはできるのですが、それを出し入れしたり、取り出しやすいように整理整頓したり、いらない情報を処分することが苦手、ということです。
「キミには、できないこととか苦手なことがあって、頑張ってもなかなか上手くいかないかもしれない」
「でもそれはキミが悪いんじゃないんだ。発達障害という頭や神経の障害を持っているからなんだよ。これは病気じゃなくて個性だよ」
「できないこともあるけど、ほかの人よりもずっと、できることもあるよ」
私も言葉を商売道具にしている身です。わかりやすく噛み砕きながら、「ここまでは理解できているな」「ここはちゃんと理解できてないな」と探りながら、繰り返し何度も話して聞かせるようにしてきました。
同じことを1万回伝えて“1”残ればOK
話して聞かせる際に、私が心がけていたポイントは3つ。
1つはそのタイミングです。日常生活や学校生活、あるいは勉強だったり遊びだったりの中で何か上手くできなかったり、良くない行動があった時に、その場ですぐに話して聞かせるようにします。
ADHDの特性として注意欠陥があるので、言われたことを覚えていられないです。どんなに怒られても、翌日には叱られたことも何で怒られたのかもすっぽり抜けてしまうことも多くあります。だから、その場ですぐに伝えます。
2つ目のポイントは、手数をできるだけ多くする、ということです。とにかく根気強く何度も伝え続けます。
以前話したことなのに忘れてしまって同じミスをする。そんな時も、「前に言われたでしょ!」と叱らないように心掛けました。
「忘れるのが普通」
「覚えていたら褒める」
同じことを1万回伝えて息子の中に“1”残ればOK、くらいのイメージで向き合ってきました。
でもこうして何度も語りかけることで、少しずつ……本当にわずかずつですが成長していきます。1つ例を挙げると、息子は幼い頃、自分の考えを相手に上手く伝えられないことで、癇癪を起すことがありました。しかし最近は、相手に伝えるのが苦手というのが自分の特性であると理解したのか、癇癪を起こすようなこともなくなりました。