ポケモンカードはもはや「貨幣」

日本でも、裏社会のポケモンカードへの関心を証明するような事件が起きている。

2022年8月、東京・秋葉原の店舗で、販売総額約1300万円相当のポケモンカード約650枚と現金約480万円が盗まれる事件が発生。これまでに指示役と実行犯あわせて4人の男が逮捕されている。

報道によると指示役の男は2022年8月4日午前3時半頃、実行役3人と共謀し、東京都千代田区のJR秋葉原駅近くのカードショップに侵入。現金約480万円とポケモンカード約650枚(約1300万円相当)を盗んだ疑いだ。

指示役の男はSNSで実行犯を募集しており、いわゆる闇バイト案件だったことも判明している。この指示役の男は区内の別店舗で約2660万円相当のポケモンカードなどが盗まれた事件にも関与したと見られている。

さらに2024年4月にも、埼玉県内の会社事務所からポケモンカード25枚を中心に、計約25万2000円(時価)を盗んだとして住吉会系の暴力団員の男ら2人が警視庁に逮捕されている。

カードを開発・販売している株式会社ポケモンは、2023年6月に新作カードが発売されるタイミングで「転売等の営利を目的とした商品購入を固くお断りしております」と呼びかけるなどしている。しかし、もはやポケモンカードは、ただの玩具の枠を超えて、有価証券あるいは貨幣に近い存在になってしまったのだ。

「転売ヤー死ね」は転売ヤーにとって魔法の言葉

2024年7月現在、これまで数千万円を超える価格で取引されていた超レアカード24の値下がりが相次いで報告され、ポケモンカードバブル崩壊を指摘する声もある。しかし前出のオガサワラ氏は、そんな懸念を「どこ吹く風」とばかりにこう話す。

奥窪優木『転売ヤー 闇の経済学』(新潮新書)
奥窪優木『転売ヤー 闇の経済学』(新潮新書)

「超高額カードのなかにはここ1年で大幅に値下がりしたものもある。たしかに半値ほどになったものもあるが、われわれがサーチで狙う数千円~数万円程度の中堅レアカードの相場は堅調。むしろ投機熱が和らいで相場が安定した今の方が、商売はしやすい」

一方で彼は、ポケモンカード以外の玩具の転売にも、新たに手を出しているようだった。

「最近は、ガンプラ(機動戦士ガンダムのプラモデル)やトミカ(タカラトミーが販売するミニカー)なんかも転売しています。月20万程度の儲けにしかならないからスモールビジネスですけどね」

謙遜するようなそぶりを見せながらも、自身のビジネスセンスを鼻にかけたような物言いに、筆者は「へぇ~っ」と大袈裟に感心してみせた。すると、得意になったオガサワラ氏はこう続けた。

「転売市場で今熱い商材を見つける魔法の言葉があるんですよ。『転売ヤー死ね』ってX(旧Twitter)とかで検索すれば、転売ヤーが今何に群がっているかわかる。うちはいちおう玩具卸なので、転売ヤーの購入価格より安く仕入れられる。それを転売市場で売るだけで、いくらかの利鞘は取れます」

愛好家の嘆きから商機を感じ取るというオガサワラ氏。転売ヤーに目をつけられないためには、愚痴を言う事さえ控えたほうがよさそうだ。

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