※本稿は、本田健『作家とお金』(きずな出版)の一部を再編集したものです。
ユーモアで乗り切る〆切地獄
作家の人生には、避けて通れないものがいくつかありますが、その一つが〆切です。
〆切とは、作品の完成を求められる恐怖の瞬間であり、多くの作家にとっては、一番大きなストレスの源だといえるでしょう。原稿を取りに来た編集者が、借金取りに見えてきます。まるで、彼らが借金の催促に来ているよう感じてしまうのです。
そういうわけで、有名な作家たちは、そんな恐怖の〆切にも対抗する方法を編み出しています。それは、ユーモラスでクリエイティブな「言い訳」のスキルを磨くことです。
〆切に間に合わないとき、ただ「遅れます」と言うのではダメと言われるだけでしょう。うまくユーモアを交えた言い訳をすることで、編集者の怒りを和らげ、仕方がないなぁと思わせられたら、勝ちというわけです。
ここでは、実際に使われた(あるいは使われたかもしれない)ユニークな言い訳の数々を紹介しながら、〆切との戦いについて見ていきます。
いままでに聞いた「しゃれた言い訳」は、「インスピレーションの神が休暇中です」というものです。
これは、創作のムードがどうしても乗らないときに使える言い訳でしょう。
編集者に、
「神様も休むことが必要なんです。だから、私の創作意欲も今は充電中です」
と伝えれば、ちょっとした笑いを誘うことができるでしょう。ですが、編集者が信心深い場合には、別の言い訳を考えたほうがいいかもしれません。
言い訳の天才になるためには、ただ単に面白いことを言うだけでなく、相手の気持ちを和らげることが重要です。
編集者も人間ですから、ユーモアを交えたやり取りができれば、多少の遅れも理解してくれることがあります。ただし、何度も同じ言い訳を使うと信頼を失うので、バリエーションを持たせなければならないでしょう。