〆切を守る作家――プロフェッショナリズムと作業習慣

さきほど、文豪たちの〆切を延ばしてもらうための言い訳を紹介しましたが、ここでは、言い訳をすることなく〆切に遅れない有名な作家についてもお話ししておきましょう。

〆切を守ることができる作家は、みな規律正しい執筆スタイルと強い自己管理能力を持っています。彼らのプロフェッショナリズムや作業習慣は、私たちにも参考になります。

たとえば、スティーヴン・キングは、その筆頭にあげられるでしょう。

彼は毎日2000語を書くことを目標に掲げ、これを厳守しています。

キングは、朝早く起きて執筆を始め、一日の仕事を終えるまでそのペースを守ります。この習慣は、彼が年間に複数の作品を発表し続ける原動力となっています。彼の著書『On Writing』では、執筆のルーティンがどれほど重要であるかが強調されており、多くの作家に影響を与えています。

J・K・ローリングもまた、〆切を守ることで知られる作家の一人です。

彼女は『ハリー・ポッター』シリーズを執筆中、厳しいスケジュールを設定し、それを遵守しました。ローリングは、静かなカフェで執筆することを好み、特定の時間帯に集中して書くことで、高い生産性を維持しました。彼女の執筆スタイルは、〆切に対するプレッシャーをうまく管理しながら、クリエイティビティを発揮はっきするよい例となっています。

ハリー・ポッターと炎のゴブレット
写真=iStock.com/WILLSIE
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村上春樹については、〆切を延ばしてもらうための言い訳を紹介しましたが、じつは〆切を守ることに定評のある作家です。彼は非常に規則正しい生活を送り、毎日午前4時に起床し、午前中に4〜5時間執筆するというルーティンを守っていました。その後はジョギングをし、午後は静かに過ごすという生活パターンを持っていたそうです。この規律正しい生活が、彼の驚異的な執筆量と高品質の作品を生み出す源となっていたのでしょう。

SF作家で生化学者、ボストン大学の教授でもあったアイザック・アシモフもまた、〆切を厳守することで有名でした。アシモフは非常に多作で、生涯にわたって500冊以上の本を書きました。彼の執筆スタイルは、一日に何時間も机に向かい、集中して書き続けるというものでした。

アガサ・クリスティも、〆切を守るプロフェッショナリズムを持つ作家の一人です。彼女は定期的に新作を発表し、多くの作品がベストセラーとなりました。クリスティは、物語の設計を事前に緻密ちみつに行って、それに基づいて執筆を進めました。そういう習慣のために、〆切に遅れることなく高品質の作品を提供できたのでしょう。

一流の作家たちに共通するのは、規則正しい執筆習慣と自己管理能力です。

彼らは、特定の時間に執筆を開始し、その時間を守り続けることで、高い生産性を維持しています。

人間には、朝型、夜型のタイプがいます。

誰も起きていない朝の4時に執筆が進む人もいれば、深夜の1時からのってくる作家もいます。いろいろ試してみて、自分の体調やメンタルの様子を見ながら、いちばんよいスタイルを確立することがカギになると思います。