古典は現代人にインスピレーションを与える

2.脳の機能のため

1984年1月22日、ワシントン・レッドスキンズ〈現・ワシントン・コマンダース〉とロサンゼルス・レイダース〈現・ラスベガス・レイダース〉とのスーパーボウル競技中に、アップルがCMを流しました。新製品マッキントッシュの広告です。

たった一度のCMにもかかわらず、マッキントッシュの販売量は放送後の100日間で7万台に上りました。このCMは最近まで広告ランキングトップ100で38位を記録し、今でも人気があります。理由は、1984年を迎え、ジョージ・オーウェルの『一九八四年』からインスピレーションを得てCMを作成したからです。『一九八四年』は、今でもハーバード大学で最も売れている古典で、「読んだフリ本」ランキングの1位です。

古典は拡張性を有し、現代人にインスピレーションと想像の種を与えてくれます。

脳の発達と機能、このふたつの特徴には、一貫する共通点があります。

まさしく、思考と拡張です。考えを拡張する過程で脳が活発に動きます。

脳が変化すると鈍才が英才になります。古典をもとに別の新しい物語が誕生するのです。

思考という源泉的な種を与えてくれるからです。

シカゴ大学の学生たちがノーベル賞を受賞する理由も、古典を通じた思考の拡張にあります。

脳を持つ輝く電球を掴もうとする手
写真=iStock.com/Dilok Klaisataporn
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「根源的な問い」が古典の力

古典にはなぜこのような力があるのでしょうか?

コ・ミスク作家による古典の定義のひとつ目を見るとわかります。

「古典は、人生や世界への探求である」

わかりやすく言うと、古典は人間や世界について本質的に考えるようにさせるのです。

偉大な古典を選ぶとすれば『聖書』、『仏教聖典』、『論語』です。

これら3つの古典には、人間がいかにして生きるべきかについての壮絶な悩みが書かれています。答えを得るために、イエスは荒野をさまよい、シッダールタは菩提樹の下で修行し、孔子はつましい食事でひとり自問自答を続けました。

シュタイナー教育は、古典教育を通じて、子どもたちみずからが、次のような問いをするようにします。

「自分は何者なのか?」
「他者と自己の関係とは何なのか?」
「生きる意味とは何なのか?」

こうした内面の問いかけをしながら成長した子どもたちが、成熟しないはずがありません。

このように壮絶で本質的な苦悩が書かれているからこそ、文章を書く人は古典を読むべきなのです。