新NISA制度が始まってまもなく1年。想像よりも運用成績が良くないと悩んでいる人はどうすればいいのか。金融教育家の上原千華子さんは「オルカンやS&P500を勧める情報を鵜呑みにすると、自分の感情や目標に合わない投資となり、ストレスがたまってしまう。まずは自分のリスク許容度を見つめ直してはどうか」という――。
下向きのトレンド
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「とりあえずオルカン」の注意点

昨今の株価や為替の乱高下で、思ったように運用成績が上がらず、投資をやめようか、金融商品を変えようか、それともじっと我慢すべきか、戸惑う投資初心者が増えています。

「史上最大の下げ幅」と聞いて怖くなり、SNSやメディアで情報を探す。情報を探せば探すほど多種多様な意見が出てくる。いったい何が起きているのか、どうすればよいのか、冷静さを保つのが難しくなっていませんか。

この傾向は、「よく分からないけど、とりあえず全世界株式(オール・カントリー)」といった人に多く見られます。たしかに「投資はオルカン一択でよい」という情報は多く、推奨している専門家もいます。ただ、これには前提条件があると筆者は考えています。つまり、

・なかなか投資を始められない人
・極力シンプルな原理原則に基づいて投資したい人
・ほったらかし積立ができ、株価の変動は全く気にしない人

であればお勧めだということです。この条件に合っていないのに、オルカンに全投資してしまったという人が多いのではないでしょうか。

自分のリスク許容度を理解しないといけない

MSCI ACWI(全世界株式)やS&P500(米国株式)、日経平均などのインデックスなら安全という訳ではなく、投資対象はハイリスク・ハイリターンの株式です。市場の調整局面ではインデックスも下落するものです。

もし、「もうこれ以上は耐えられない」「損切りだ」「騙された」と思っているなら、今のポートフォリオは、自分のリスク許容度を超えている可能性があります。投資判断は心理的要因にも大きく影響されるのです。

たとえば、SNSで見かけた成功例やメディアの報道を見て、「自分も同じようにしなければ」と思うかもしれません。行動経済学でいうハーディング現象(同調行動)です。人間は案外不合理な生き物です。合理的に物事を判断しようと思っていても、周りの人々と同じ行動をとると安心する傾向にあります。

一番重要なのは、自分の目標やリスク許容度に合っているか、そして長期的な視点を持てるかどうかです。感情に左右されない判断が成功する鍵となります。投資経験を積めば、少しずつできるようになるので、焦らないほうがよいでしょう。