2023年に過去最高の売上を更新した日本マクドナルドだが、1991年から1994年の5年間は業績が低迷していた。その危機をどう乗り切ったのか。KUREYON代表の中澤一雄さんは「1994年に2152億円だった売上は1999年に3944億円となった。V字回復させるために行った3つの秘策がある」という――。

※本稿は、中澤一雄『ディズニーとマクドナルドに学んだ最強のマネジメント』(宝島社)の一部を再編集したものです。

マクドナルドのセット
写真=iStock.com/Popartic
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業績を改善させた3つの施策

1994年、私はマーケティング本部にシニアディレクターとして異動になりました。売上高と経常利益(図表1)を見てもらえればわかるように、1991年から1994年は業績が低迷しており、業績の改善が急務となっていました。そのため、私たちは次の3つの戦略を立てました。

① 価格戦略(バリューセットなど)
② 期間限定の新商品開発
③ サテライト戦略(PMO)

まずは①の価格戦略について説明しましょう。私たちは初めに「ハンバーガー妥協価格累計グラフ」というものを作成しました。妥協価格とは、お客様が「これくらいの値段なら買ってもいい」と思うラインの価格を意味しています。

それによると、1994年当時はハンバーガーが210円の場合、その値段なら買ってもいいと答えた人がわずか20%しかいませんでした。ちなみに、2024年現在のマクドナルドのハンバーガー価格は、単品で170円となっています。それが、私がマーケティングに異動した時、210円だったのです。

この210円というかつてのハンバーガーの価格は、満足度調査を行った上で決めたのではありません。

私たちは、「そもそも210円という価格は適正な値付けなのだろうか?」「このままの価格で売上を最大化できるのだろうか?」と疑問に思い、お客様にアンケートをとり価格満足度調査を行うことにしました。

ハンバーガーは朝の10時から閉店時間まで販売しており、だいたいお昼の12時から1時に売上全体の30%くらいを売り上げていました。

お客様満足度100%は目指さない方がいい

ハンバーガーの売上、時間帯、購入者の人数などを把握し、例えば午前10時から11時の間にハンバーガーを購入するのは5人ということがわかったら、同じ時間帯に路上を歩いている同じ人数の人に声をかけてアンケートをとったのです。

つまり、店舗に近いところで実際のハンバーガーを食べていただいて、「このハンバーガーをいくらだったら買いますか?」と質問するわけです。この時、「マクドナルドのハンバーガーであることを伝えた場合」と「伝えなかった場合」の両方のデータをとるようにしました。

結果的に、当時210円だったハンバーガーをその値段で買ってもいいと答えた人は、20%しかいませんでした。80%が「買わない」と答えたのです。それでは、100%が「これくらいなら買う」と答えた価格はいくらだったかというと、100円でした。

よくお客様満足度100%などという言葉を耳にすることがありますが、私に言わせれば満足度100%を追求していたら、その企業は早晩潰れてしまいます。当時、お客様満足度100%を追求して、100円でハンバーガーを売っていたら困ったことになっていたはずです。

そこで私たちは、現実的なところで、80%以上のお客様が「これなら買う」と判断できるラインを突くべきだと考えました。