主力商品を80円値下げ

アンケートの結果、ハンバーガーが130円なら約80%もの人が「買ってもいい」と判断したため、そのあたりの価格が最も良い結果をもたらすのではないかと考えた私たちは、1995年、210円から130円に値下げすることにしたのです。また、ハンバーガーだけでなく、チーズバーガー(240円→160円)とダブルチーズバーガー(350円→270円)も妥協価格に従って値下げを敢行しました。

210円から130円に値下げするということは、80円も値下げすることになります。もちろん、マクドナルドとしては大変ですが、いったん下げてしまえば、あとはその価格で売れるよう努力をするしかなくなります。そのためには、材料の仕入れ価格をできるだけ下げる必要があります。

マクドナルドは、世界規模の大企業ですので、材料の調達場所をどこか1カ所に限定せず、全世界の調達先から仕入れることができています。これは、マクドナルドが全世界で店舗展開しているがゆえのメリットと言えるでしょう。とはいえ、全世界から安い肉を仕入れていると聞くと、「品質は無視しているのか」と思われるかもしれません。しかし、そんなことはありません。100%ビーフなど多くの素材には厳格な品質基準が設けられ、それらは一元管理されています。

仕入れ値の安さを優先するあまり、品質にばらつきがある仕入れをするようなことは決してないということです。

日本人は「丸め」るのが好き

マクドナルドは、仕入れルートを全世界的に整備し、その構造を徹底的にシステム化しています。

それだけでなく、全世界で店舗展開をしていることのメリットを生かし、世界で今一番安い材料はどこにあるか、旬の素材はどこにあるかといった情報をつかむことによって、その時一番安い材料を調達することが可能になっているのです。

これは同じく世界的大企業のコカ・コーラなどもやっています。全世界で展開している企業は、最も安い原材料を仕入れることができるため、提供価格を低く抑えられるわけです。ちなみに、1990年代に円高が進んでいた頃には、それまで国内調達していた材料を、海外から調達するように切り替えて、コストを大幅に抑えることができました。

結果的に、この値下げはマクドナルド全体の努力で上手くいきます。ところで、価格という点に関して言うと、日本人には興味深い特徴があります。210円なら買ってもいいと言った人は20%ですが、200円なら買ってもいいと言った人はなんと50%を超えたのです。たったの10円で30%以上も増えています。これは、日本人が「丸め」るのが好きだからだと思います。つまり、キリのいい価格です。

200円と190円だとそれほどの差はないのに、210円と200円との間には大きな差がある。このことは、日本の国内市場でモノを売る時には、念頭に置いたほうがいいかもしれません。