仕事のプレッシャーに打ち勝つために、自己肯定感を高めることが有効だと思われている。だが、グロービス経営大学院教授の若杉忠弘氏は「自己肯定感を重視しすぎると周囲に悪影響を及ぼすことがある。自己肯定感に代わるものとして今世界で注目されているのが、“セルフ・コンパッション”の手法だ」という――。

※本稿は、若杉忠弘著『すぐれたリーダーほど自分にやさしい』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

同じ机で働く若い学生とシニア女性
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自分に鞭打って駆り立てた結果はどうなるか?

チームメンバーを引っ張りつつ、自らも頑張らなければいけないリーダーという立場は、心身ともに疲れ切ってしまうことも。そんな疲れ切っている心身をより悪化させてしまうのが、自分自身への厳しさです。

つらいときに「もっと頑張らなければいけない」と厳しく鞭を打ったり、うまくいかないときに「自分はダメだ」「なんでできないんだ」と自己批判をしてしまうことで、追い打ちをかけてしまうのです。

私自身、新卒で戦略コンサルティングファームに入社したころは、自分に厳しくあたっていたことを思い出します。「もっと価値を出せねば」と自分への厳しさを原動力に、仕事へと駆り立てていました。

今では、コンサルタントの働き方もずいぶん変わったと思いますが、当時、同じ業界のコンサルタントが心身の健康を崩したという話を聞くたびに、「こんなやり方でいいのだろうか」と、心のどこかに違和感をもっていました。