そこでシュンペーターである。彼の考え方は12年の著書『経済発展の理論』にある「イノベーション」と「創造的破壊」に集約される。とりわけ「イノベーション」は資本主義の原動力だといっている。シュンペーターのいう「イノベーション」にはいくつかあるが、最も重要なのは新しいモノやサービスをつくりだす「プロダクト・イノベーション」であろう。

30年以上前、私はニューヨークで暮らしていた。醤油を求めてスーパーに行っても、キッコーマンは見当たらず、東洋系の雑貨店にかろうじて見つけることができた時代だった。

10年ほど前に、イタリアのシエナという小さな街で半年ほど生活したことがある。その街にあるスーパーには、キッコーマンが堂々と棚に並んでいて驚いた。そのキッコーマンは、いまや営業利益の6割以上を海外で稼ぎ、醤油という日本独特の製品が世界中で売られている。地道な努力によって海外の市場を開拓してきたのだ。イノベーションは何も新しい技術や製品の開発ばかりを指すのではない。醤油のように、国内向けと思われてきたものを海外向けに販売するといった売り方の変更も、立派なイノベーションである。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=山下 諭)
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