小泉改革には所得再分配の哲学はない

「新自由主義」が支持された背景に80年代の特殊事情あり

「新自由主義」が支持された背景に80年代の特殊事情あり

派手な言動から新自由主義の旗手とされるフリードマンだが、彼の経済学者としての活躍とサッチャーの経済政策を結びつけるのはいささか牽強付会だろう。経済思想の面でサッチャーに大きな影響を与えたのは、ハイエクである。

「市場に代替する仕組みは存在しない(There is No Alternative to Market、略してTINA)」はサッチャーの有名な言葉だが、それを早くから提唱してきたのがハイエクだ。TINAの認識が正しいことは、経済理論的にはすでに結着がついている。現実世界でも旧ソ連や東欧圏の社会主義経済の失敗という形で証明され、ハイエクが行ってきた仕事の意味は80年代になってようやく理解された。

しかし、サッチャーの改革にしてもレーガンの改革にしても、ことさら新自由主義という言葉を持ち出さなくても、市場メカニズムの有効性という従来の経済学の文脈から十分に説明がつく。国営企業や労働組合の影響が強い資本主義経済がゆきづまりを見せ、他方で社会主義経済の欠陥が顕在化した70~80年代に、市場メカニズムの役割を重視する方向に世界が向かったのは自然な流れであった。むしろ経済学の観点からすれば普通の政策である。

(構成=小川 剛)