他方で、EU域内の事業者の中には、EUDRの発効を念頭にすでに対策に取り組んでいた企業も少なからず存在する。当然ながらそうした事業者からは、今回の欧州委員会の対応に対する不満の声が強く上がっている。一連のエピソードには、日本の事業者がEUでビジネスを行う上での教訓が含まれているので、簡単に事情を解説してみたい。

【図表】EUの食品価格
出所=ユーロスタット

EUDRの発効を念頭に対策をしていたEU域内の事業者は、EUDRに適合した原材料を確保するため、多額の割増金を生産者に支払っていた。EUDRが発効されていれば、域内の事業者は割増金のコストを食品類の価格に転嫁することができた。EUDRに適合した食品類の流通しか認められないなら、消費者もそれを受け入れるしかないからだ。

しかしEUDRの発効が延期となったことで、消費者も従来通りの食品類を引き続き購入できることになった。これでは環境意識の高い消費者以外、EUDRに適合させるためのコストを上乗せした食品類の購入など見込めない。そのため、EUDR対策を進めた事業者は割増金のコストを価格転嫁できず、そのコストを自ら負担せざるを得なくなる。