肺がんは「低線量CT検査」一択

がん部位別死亡数1位は、肺がんである。国が推奨する肺がん検診は、40歳以上を対象に「胸部X線検査(レントゲン検査)」を年に1回行う。

50歳以上の喫煙指数(1日の本数×年数)が600以上の人には「喀痰細胞診」が加わる。ただし、検出感度は約40%なので、実際に肺がんがあっても見逃される可能性も大きい。

そもそも胸部X線画像は、肺全体の約3分の1に、肋骨や心臓などが重なって「死角」が生じてしまう。さらに画像を医師がチェックする「読影どくえい」は、1枚あたり最大で36秒、最も短いと7秒程度(いずれも平均値)しかないので、見逃しのヒューマンエラーが起きやすい。

胸部X線の画像
筆者提供
胸部X線の画像

肺がんになる最大のリスクは、タバコであることは言うまでもない。喫煙者のリスクは、非喫煙の約5倍(男性)、周囲のタバコの煙を吸った受動喫煙者も約1.3倍になる。

該当する人は、放射線量を抑えた「低線量CT検査」の受診が、第一選択だ。

喫煙の頻度や肺の状態によって、検査の間隔は数年おきになるケースもあるので、肺がんに詳しい呼吸器の専門医に相談してほしい。

肺がん検診については、連載第1回で詳しく検証しているので、参考にしていただきたい。

大腸がん「便潜血法」の落とし穴

国内のがん死亡数2位は、大腸がん。進行のスピードが比較的遅く、「治りやすいがん」の代表格と言われ、ステージ1の5年生存率は約99%、ステージ3で約86%と高い。

だが、ステージ4になると、約23%まで低下してしまう。

大腸がん検診は、40歳以上を対象に「便潜血法」を年1回受けることを国は推奨している。大腸がんになると、出血して便に血が混じることから、採取した便の血液成分を測定するのだ。

ただし、「便潜血法」の感度(がんを検出する能力)は、決して高いとは言えない(※)。集団検診で「便潜血法」による死亡率減少効果のエビデンスがある、として国が推奨しているが、“見逃し”の可能性は常にあるのだ。

検診関係者は取材に対して、「大腸がんの進行が遅いので、検査で見逃されたとしても、次の検査で発見できれば治療は間に合う」という主旨の説明をしていた。だが、「便潜血法」の感度を考えると、「次の検査」でも見逃しのリスクがあり、この主張は整合性を欠いている。

※「がん情報サービス」では便潜血法の感度を30.0~92.9%としているが、研究によって差が大きい