高感度の「下部内視鏡検査」にもリスク

「便潜血法」は安価で、検査自体のリスクはほとんどないが、だからと言って精度が低い検査によって、命を失うことになるのは本末転倒だろう。

大腸がんを早期発見する方法としては、「下部内視鏡検査」が最も確実で信頼性が高い。検査の感度は95%以上。がんになる可能性があるポリープは、内視鏡で切除することも可能だ。

検査の間隔は毎年ではなく、3年おき、5年おき、など、受診者の状態によって個人差がある。まずは、消化器内科医に相談してもらいたい。

注意したいのは「下部内視鏡検査」のリスク。合併症などが起きる頻度は0.069%、また腸に孔を開ける事故や心不全、麻酔薬などで死亡する頻度は、0.00088%という報告もある(1998~2002年:日本消化器内視鏡学会)。

死亡事故も起きているバリウム検査

かつて、日本で最も死亡数が高かったのが、胃がんである。その後、昭和30年代をピークに、大きく減少傾向に転じて、現在では3位になった。

国は、50歳以上に胃X線検査(バリウム検査)、または上部内視鏡検査を2年に一度の間隔で推奨している。

胃がんの治療を専門にする消化器内科医の大半は、バリウム検査には否定的だ。

バリウム検査は、画像に写る凹凸などの変化から、がんを発見するのだが、早期の小さな胃がんや、凹凸のあまりないタイプのがんを発見することは難しいからだ。

胃X線検査では発見しにくいがんがある
筆者提供
バリウム検査では、早期がんの発見が難しい

バリウム液を誤嚥して肺に入ってしまうと除去が難しい。また、大腸などにバリウムの塊が固着して孔が開き(大腸穿孔)、死亡するケースがたびたび起きているのだ。

胃X線検査で飲むバリウム液
筆者提供
検査で飲用するバリウム液の「誤嚥事故」も少なくない

胃がんの原因は、ヘリコバクター・ピロリ菌なので、まずその検査を受けることが重要だ。ピロリ菌の有無と胃粘膜の状態を組み合わせて、胃がんになるリスクを判定して、内視鏡検査に繋げる検査もある(ABC検診、または胃がんリスク検査)。

一部の自治体や企業は、この検査を導入して、胃がんの早期発見に成果を上げている。