「またお願いします」という一言が嬉しかった
試合がない練習日には、決まってスローボールを打つ練習をやっていました。打撃投手が普段投げる場所から山なりでストライクを投げるのは難しく、私でもボールが多くなってしまいました。
投げるのも難しかったですが、打つのも難しいはずなのに。小久保はかなりの高確率でホームランにしていました。バッティングのことはよくわかりませんが、ホームランを打つための技術を磨いていたのだと思います。
ジャイアンツに移籍して戻ってきた時に「またお願いします」と専属を頼まれた時にはとても嬉しく思いました。バッティングコーチと打ち合わせをするより前に相談にきてくれたようで、「一緒に組む右の打撃投手は誰にしましょうか?」と意見を求めてくれて、寺地健が担当することになりました。
選手から直接担当してほしいと言われたり、担当決めの意見を求められるケースはほとんどありませんので、意気に感じました。
引退する日まで担当しましたが、その時を迎えてもストイックなバッティング練習は変わりませんでした。
根っからストイックな人間なんだと思います。それは、引退しても体形がまったく変わっていないことからもわかりますよね。
快進撃の裏にコミュニケーション改革
これを書いているのは2024年の8月初旬ですが、今シーズンのパ・リーグはホークスが独走状態を築き、すでにマジックナンバーが点いたり消えたりしている状態です。今季のホークスについて気づいたことを書いてみたいと思います。
今年、小久保監督に代わって、現場で感じる大きな変化は、コミュニケーションを取ることにものすごく力を入れていることです。
私たち打撃投手という部署は、本当に何十年も変わらないで同じような仕事を同じようにやっているのですが、それでもキャンプが始まる前に、小久保監督から「今年のキャンプでは、全員、常に帽子着用で徹底することにしますので、バッピのみなさんもお願いします」と言われました。
2024年のチームスローガンは「VIVA(ビバ)」。
それに込めた思いを小久保監督は、「強いチームを取り戻す。その中で個人が美意識を持ちながら、最終的には優勝してファンの皆様と喜びを分かち合いたい」と言いました。
しっかりと言葉で思いを伝え、その表現として、練習中はだらしなく見えないようにいつでも帽子を被ることにしたと、わざわざ打撃投手にも伝えてくれました。