昭和から続いている「軍隊式」からの脱却

打撃投手は、バッティング練習中に球拾いを手伝いますが、その時に帽子を被らない人もいたので、私は部署のリーダーとして、みんなにも徹底するように言いました。

これは打撃投手の部署にあったひとつの事例です。小久保監督は自ら積極的にコミュニケーションを取っています。

私もプロ野球界に長くいて、今ふたつのやり方がせめぎ合っているような気がしています。

ひとつは、昭和の時代から続く「軍隊式」を意識した組織運営。私たちはそういう環境で長く野球をしてきました。

監督が各担当コーチに指示を出し、担当コーチが担当部署の選手たちにその指示を伝える。監督が直接選手たちに接触することはない――そういうやり方です。

令和の現在、それとはまったく違うやり方がプロ野球の世界にも表れています。もちろん組織運営として担当コーチというのは存在していますが、監督も直接選手たちにコミュニケーションを取っていくやり方です。

監督が選手ひとりひとりに声かけする理由

ジャイアンツがドジャース戦法を学んでV9を達成した頃、メジャーリーグでも軍隊式に近い管理野球が当たり前でした。

それから何十年も経ち、アメリカの野球も大きく変化し、もうひとつのやり方、監督も選手たちと積極的にコミュニケーションを取るやり方が現れました。

メジャーリーグでも、中南米の選手やアジアの選手も増えて、軍隊式というよりも個人の能力を最大限活用する野球へと変わりました。それにつれてコミュニケーションの取り方もまったく違うものになっていきました。

日本の少年野球や高校野球の世界も大きく変わっています。野球しかなかった時代から、いろんなスポーツを選べる時代へ。スポーツよりもゲームが選ばれる時代へと変化しました。「軍隊式」は急激に減少しています。

これからはプロ野球の世界にもどんどん「軍隊式」を知らない選手たちが入ってきます。コミュニケーションの取り方も変わっていくでしょう。

小久保監督は選手ひとりひとりに声をかけています。選手たちは非常にやりやすそうにしています。