「ここぞ」という場面で用いてセルフ・コントロール能力を高める
サウスダコタ大学のX・T・ワンは、65名の大学生のうち、32名を実験群に、33名を比較のためのコントロール群に割り振って、実験群のほうには砂糖が入っている「スプライト」を飲んでもらいました。
コントロール群には、人工甘味料が入っているので甘さは感じられるものの、血糖値はまったく上がらない「スプライト・ゼロ」を飲んでもらいました。
それから、どちらのグループにも、「明日120ドルもらうのと、1カ月後に450ドルもらうのでは、どちらがよいですか?」といった選択課題をやってもらいます。
たいていの人はセルフ・コントロール能力が低いので、こういう選択課題をやらせると、必ず早く報酬が得られるほうを選びます。
報酬を遅らせたほうがたくさんもらえるので、そちらのほうが確実におトクだとわかっていてさえ、遅らせるほうを選ばないのです。人は我慢できないのですね。
ところが、事前に糖分をとって血中のグルコース濃度をアップさせると、報酬を遅らせて「我慢する」という選択が増えることがわかりました。
砂糖は私たちのセルフ・コントロール能力を高めてくれるのです。
もちろん、しょっちゅう甘いものを食べていたら太ってしまいますので、このテクニックは「ここぞ!」というときまでとっておいたほうがいいでしょうね。
やりたくもない仕事なのに、それでも本日中にどうにか片づけないといけないときなど、本当に切羽詰まったときには砂糖を摂取してください。
10分ほどで血中のグルコース濃度は高まりますので、やる気を引き出して一気に終わらせてしまうといいでしょう。
部屋の壁に「絶対に○○大学合格」は心理学的に効果あり
受験生は、「絶対に○○大学合格!」などと書いた紙を部屋の壁に貼りつけておくことがありますが、心理学的に言うと、これは悪くありません。
「合格」という文字を目にすると、自分でも知らないうちに勉強しようという意欲が生まれるからです。
たまたま目にした文字や映像などが、その後の行動に影響を与えることを心理学では「プライミング効果」と呼んでいます。
プライミングとは「点火剤」や「起爆剤」という意味です。
ドイツにあるポツダム大学のステファン・エンゲザーは、212名の大学生に、10×10マスにアルファベットの文字が並んでいる表を見せ、その中に隠された単語を見つけ出すという作業をしてもらいました。
まずは練習してもらうのですが、あるグループでは見つけ出す単語は「成功」「勝利」といった単語になるようにしました。
さりげなく、達成意欲をプライミングするような単語になっているわけです。
別のグループでは、見つけ出す単語は「植物」「ランプ」「緑」など、どうでもいいようなものにします。こちらはコントロールグループです。
これを何回かやってもらい、十分にプライミングができたところで、「さて、みなさん。今までは作業に慣れてもらうための練習でしたが、ここからが本番ですよ」と告げ、同じ10×10のマスで、名詞か動詞の単語を見つけ出してもらいました。
すると、練習で「成功」などの達成意欲にかかわる単語を見つけてプライミングを受けたグループでは、発見した名詞は12.4個、動詞は12.3個でした。
練習で達成意欲に関係ない単語を見つけたグループでは、名詞11.1個、動詞11.3個でしたので、プライミングを受けたグループのほうが成績は良くなったことになります。
何か行動をするときには、意欲を引き出すために「やる気」「根性」「元気」といった単語を頭の中に思い浮かべてみるのもいいですね。そうしてからのほうが、はるかに行動を起こしやすくなるでしょう。