母親を見限った瞬間

高校生になった白柳さんは、家にいると酷い頭痛がするようになった。

「当時は家庭が全く安全な場所であるとは思えず、家族=世界に感じていて、『こんな苦しい世界にもういたくない、死んでしまいたい』と思うようになりました」

3者面談で担任の教師に「何か悩みはない?」と聞かれたとき、「死んでしまいたい」と言いたかったが、言い出せずに涙だけ流したことがあった。

するとその帰り道に母親に

「さっきはどうしたの? なんでも相談して?」

と珍しく優しく言われたため、思い切って

「死にたい……」

とこぼした。

途端、母親の顔が一変。

「は⁈ そんなこと言われたって困るよ! お母さんの子がそんなこと言うなんて……!」

白柳さんは、悩みを聞いてもらえるどころか、邪険に扱われるだけだったことに絶望。この時以降、白柳さんは心を固く閉ざした。

床に座り込んで打ちひしがれている2人の女性のシルエット
写真=iStock.com/Hibrida13
※写真はイメージです

嫁をいじめる姑、部下を自殺させた疑惑の父、そして鼻の形が悪いと自分がお腹を痛めて産んだ娘をこき下ろして、SOSにも一切耳を貸さない母……家族はみな闇を抱え、自分のこちとばかり考えていた。

やがて大学の志望校を選ぶ頃、

「あなたが本気でやりたいことなら、医学部だろうが私立だろうがお金は出すから安心して。好きなところを選んでいいよ」

と母親から言われた。

白柳さんはその言葉を信じ、大好きな動物系の私立大学(獣医学部)を受験し、合格して喜んでいた。

ところが、一応受けさせられた国立大学も合格していたことを知るやいなや、

「将来のことを考えたら国立大学の方が絶対にいいから」
「国立の方が響きが良いから。結局就職は大学名で決まる」

などと言い出して、結局国立大学へ進学させられた。

「お金のも問題もあるからしょうがないと思いましたが、子どもに理解があるようなことを言っても、結局は子どもの夢より世間体なんだなと愕然としました。このことは今も恨んでいます」

白柳さんは、大学進学とともに家を出た。

「母は、『家から通える大学に入ったら親孝行』『結婚相手は地元で一番偏差値の高い男子校出身の人にして、地元に家を建てなさい』『就職は地元、どうしてもなければ県内に』などと言って、やたらと私を手元に置きたがりました。でも、これ以上実家にいると精神をやられると思ったので、大学進学と同時に家を出ることだけは譲りませんでした」

これ以降、白柳さんは就職先も嫁ぎ先も県外にし、出産時に里帰り出産もせず、極力実家と距離を置いた(以下、後編へ続く)。

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