成熟期に必要な「LOVE YOU」

(右から)アサヒグループホールディングス社長 泉谷直木氏、カーナープロダクト代表取締役 横田雅俊氏

【横田】 アサヒビールは2010年、ビール類課税数量および売り上げで、キリンビールとの激しい競り合いを制しシェア1位を奪回しました。一番の要因は何だと分析していますか。

【泉谷】 「改めてお客さまへ接近した」ということに尽きると思います。どういうことかというと、国内のビール類市場は成熟期に入り、しかもお客さまの嗜好は変化しています。その中では成長期と違って営業も受け身ではダメで、前向きに変化に合わせていかなければいけません。こちらから積極的に提案していくことが必要なんです。

【横田】 おっしゃるとおり、顧客への接近は大事です。しかし具体的な活動に落とし込むのは難しいと思います。基本的な戦略や方針を徹底させる、あるいは何らかの仕掛けを用意する必要がありますね。

【泉谷】 はい。お客さまに接近する前に、まず「接近しよう」という気持ちにならなければダメですね。それはこういうことです。われわれメーカーは、商品をつくり流通させるために工場を持ち従業員を雇用しますが、そのコストを最終的に全部負担しているのはお客さまです。だからお客さまに対して謙虚でなければいけません。

お客さまの声は市場調査やグループインタビューを通じて入ってきます。ところが、かつてはその情報を十分に活用できているとはいえなかった。「俺たちがいいものを出しているから売れるはずだ」という考えが支配的でした。しかし成熟市場になると、それだけでは通用しません。お客さまにとっての満足はどうか、どれくらい魅力があるかということが大事です。

ですから、すべてのお客さまを調査しデータをとる、あるいは生の声を聞く、店頭でお客さまの動きを見る。そこまでやらないと接近できないと思います。

【横田】 営業マンはそもそも顧客に一番近い存在ですが、そこへさらに接近するということですね。具体的な方策としてはどんなことをしているのですか。

【泉谷】 かつての成長期といまの成熟期とを分けて考えると、成長期には「LOVE ME」でよかった。つまり、全体が伸びている中では、宣伝にしても販促のPOPにしても、自分のことを前面に打ち出し、「私を愛して」とアピールすれば効果が出た。

ところが成熟期に入ると、お客さまに対して積極的に「(I)LOVE YOU」と発信していかないとダメなんです。「お客さまを愛しています。だからこう貢献します」ということです。

私たちの第一次顧客は小売店です。小売りさんが抱えている課題は何か、提案すべきことは何か。それを判別するには、相手を深く知らなければいけません。消費者に対しても同じですが、ニーズを知ることなしに対策はありえません。