【横田】 どこまでニーズを深掘りできるかが問われますね。
【泉谷】 そうです。これまでビールの営業は出荷数量、売上高にこだわりすぎていたと思います。私もこの間、営業マンに同行して得意先の話をうかがってきましたが、すばらしいプレゼンをしてもらっているというお褒めの言葉をいただく一方で、課題も見えてきました。プレゼンの中身が全部「売り上げ」をベースにしていたのです。
そこで、ある得意先に「社長、本音では売り上げよりも粗利ベースの提案をしてほしいんじゃないですか?」と水を向けたら、「いや、それはそうですよ」とおっしゃるわけです。
もちろん売り上げも多いほうがいいけれど、お得意さまのニーズはむしろ粗利のほうに向いている。営業には、そこを考えないといけないぞと説教しました(笑)。
あるいは、これは海外で聞いた話ですが、消費者は店の中で3つの通貨を使うといいます。お金と時間とストレスです。ストレスというのは、商品を選ぶとかキャッシャーで支払いをするときのストレスですね。また、買い物行動には急ぎの買い物、買い足しの買い物、まとめ買いの3種がある。
3つの通貨と3つの買い物行動をマトリックスにすると9つのセルが生まれます。すると、この9つのセルをお店と一緒に解消していこうというアイデアが出てきます。
こういう仮説をもとにスタートするのが提案営業、企画営業です。ソリューション(問題解決)型の営業といってもいい。得意先と一緒に勉強しながら解決していく。これからは、そういう営業になっていく必要があると思うんです。
【横田】 ニーズを把握し、仮説を立て、顧客と一体になって課題解決へ走れということですね。しかしその前提には営業マン個々の粘りが必要です。「LOVE ME」を脱して「LOVE YOU」型になれる営業マンはどこが違いますか。
【泉谷】 それは、のめり込めるかどうかですね。提案営業であろうと、大前提は「ハート」なんです。営業は、頭と胸と腹の3つの部分でやるものだと思います。頭というのは理屈、胸というのは情熱です。腹の営業とは、人間関係の綾をのみ込みつつ進める営業です。人間関係と情熱と理論の3つがそろってはじめてソリューションとなる。
営業も頭でっかちでは勝てません。腹があり、胸があり、すなわちハートがないとダメなんです。そういう前提で人材育成を進めています。
その中で、「LOVE YOU」といえる営業マンは、ある一線を越えてのめり込める人ですね。やはり人間同士の関係は、一線を越えなければ深まりません。ハートが通い合うところまで近づいていないと、そこまでは届かない。横田さんがおっしゃる「感情移入」と似ていますが、そのことがとても大事だと思います。