歯並びを悪くする子供の口呼吸を見分ける方法は何か。日本歯科大学付属病院臨床准教授で歯科医師の多保学さんは「口呼吸の子どもの見分け方は、口を閉じた時に、下顎に梅干しのようなしわができるかどうかだ。口をいつも開けていると、『口輪筋』という口の周りの筋肉が弱るため、口を閉じた時に、下唇の下にある『オトガイ筋』という筋肉が緊張することでしわができる」という――。

※本稿は、多保学『0歳から100歳までの これからの「歯の教科書」』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

口呼吸の子どもは歯並びが悪くなる

子どもがいつも口をポカンと開けていたら、口での呼吸が習慣化している可能性があります。

パスタを食べる女の子
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口呼吸をしている子どもは歯並びが悪くなります。なぜかというと、口を開いている時は舌が下がっているため「低位舌」になります。そうするとスポットに舌がつかなくなり、上顎骨が刺激されず上顎骨が十分に育ちません。

また、舌の位置が下がると下顎の前歯を押しやすくなります。その結果、前歯が噛み合わない「開咬」などの不正咬合につながります。子どもが口呼吸をしてしまう原因の1つには、鼻に何らかの問題があることが考えられます。

鼻が悪い子どもは、往々にして顎が育ちません。上顎が成長しないと鼻腔や気道も狭くなる傾向にあります。それがさらに鼻呼吸のしづらさにつながり、そしてますます口呼吸になる……という悪循環に陥ってしまいます。

呼吸は鼻で行うのが基本です。鼻から吸うことで、空気中のほこりや細菌などの異物が鼻腔内の毛や粘膜に吸着されて侵入を防ぎます。口にはそのような機能はないため、口から吸うと異物が直接喉に入り込み、風邪やウイルス性疾患などにかかりやすくなります。

また、鼻で吸った空気は加温・加湿され、副鼻腔で生み出される一酸化窒素(NO)と一緒に肺に運ばれることで、酸素と二酸化炭素を効率よく交換することができます。こうした機能も口にはないので、口から吸うと呼吸機能の低下につながります。