クチャクチャ音を立ててご飯を食べている子は口呼吸の可能性

口呼吸は咀嚼機能にも悪影響を及ぼします。食事中は、食べ物を噛みながら口呼吸もしなければならないので、咀嚼に時間がかかり、嚥下機能も低下します。よくクチャクチャ音を立ててご飯を食べている子は口呼吸の可能性があり、要注意です。

口を開けている時間が長くなると、口の中が乾燥して唾液の分泌量が減ります。唾液による自浄作用が減少して細菌が繁殖しやすくなり、結果的に虫歯や歯周病、口臭のリスクが高まります。このように、口呼吸にはさまざまなリスクがあるのです。

口をいつも開けている子どもの見分け方は、口を閉じた時に、下顎に梅干しのようなしわができるかどうかです(図表1)。

【図表1】口唇閉鎖不全症のサイン
出所=『0歳から100歳までの これからの「歯の教科書」』(イースト・プレス)

口をいつも開けていると、「口輪筋」という口の周りの筋肉が弱るため、口を閉じた時に、下唇の下にある「オトガイ筋」という筋肉が緊張することでしわができます。このしわができたら、「口唇閉鎖不全症」という病気かもしれません。

口唇閉鎖不全症は治療の難易度が高く、一般的には通常の小児矯正治療よりも治療期間が長く、1年半から2年半程度の治療期間が必要です。

その間にトレーニングや顎を広げる緩徐拡大装置や急速拡大装置による治療などを行いますが、それでも口が閉じない子どもはいます。子どもが口呼吸をしていることに気づいたら、早めに治療することをおすすめします。

口呼吸を治すには、鼻で呼吸できない原因を突き止める

正確な診断をするためには、気道を撮影できるCTが必要です。

しかし、一般のCTよりも高価なため、導入している歯科医院はかなり少なくなります。当法人では3つある歯科医院全てにCTはありますが、小児歯科医院でのみ気道を撮影できるCTを導入しています。

CTでチェックするのは、呼吸の状態に関係する気道の状態です。気道の体積の他、鼻腔の解剖(鼻中隔湾曲症の有無)、副鼻腔の炎症の有無、アデノイド肥大の程度(咽頭扁桃:鼻の奥にあるリンパ組織の塊)、扁桃腺(口蓋咽頭)の肥大の評価などを確認します。

口呼吸の子どもの特徴は、首が前傾の状態、いわゆる猫背になっていることです。また、口呼吸により低位舌になると、舌が後ろに押し込まれてさらに気道が狭くなります。

正しい姿勢にすると気道が狭くなるため、首を前に出すことで気道が広がり、呼吸がしやすくなります。そのため、気道を広げるために猫背にしているのです。姿勢が悪い状態(猫背のまま)でCTを撮ると、気道が広がった形で評価することになってしまいます。

正しい姿勢でCTを撮ることで、気道の正確な状態がわかります。鼻の通りが悪くなる原因として、例えば、鼻の穴を2つに隔てている仕切りである「鼻中隔」が歪んでいる「鼻中隔湾曲症」、上顎の骨の中にある「上顎洞」という副鼻腔の炎症、アデノイドや扁桃腺がひどく腫れていることなどが挙げられます。