口呼吸をしていると、顎が育たない

また、指しゃぶりをする子どもは、鼻呼吸ができていない可能性もあります。指をしゃぶることで上顎が上を向くことで、気道が確保されて呼吸しやすくなるためです(図表3)。

【図表3】上を向くことにより気道が広がります
出所=『0歳から100歳までの これからの「歯の教科書」』(イースト・プレス)

鼻と口は密接な関係があります。本来は口ではなく鼻で呼吸すべきであり、鼻呼吸は顎の成長にとっても必要です。口呼吸をしていると、顎が育ちません。これは口呼吸をしていると常に口が開いているので、舌がスポットについていない状態です。

これでは顎は発達しません。口が常に開いている状態だと、舌は低位舌の状態になり、舌が原因で舌の後ろにある気道を圧迫していきます。結果的に口呼吸により気道が閉塞されてしまうのです。

ちなみに、人間は首を前にして、猫背の体勢をとることにより、気道が開き呼吸がしやすくなります(ストレートネック)。

そのため、子どもは代償的に、猫背の体勢をとることにより、呼吸がしやすい姿勢をとるのです。口呼吸の子がストレートネックで猫背になっているのはこれが原因です(図表4)。

【図表4】姿勢と呼吸と気道の関係
出所=『0歳から100歳までの これからの「歯の教科書」』(イースト・プレス)

悪習癖、不正咬合や顎の成長は呼吸や姿勢とも密接に関係しているのです。口呼吸の有無のチェックは、子どもがYouTubeなどの動画サイトやテレビを見て油断している時などに、口が開いてないか見てあげてください。

鼻に疾患があり口呼吸になっているかを鑑別する方法

ほとんどの親御さんは「うちの子は大丈夫です」と言いますが、かなり高い確率で口が開いています。コロナ禍になりマスクを着用するようになってから口呼吸をしている子どもが急激に増えました。

マスクをすると、大人でも鼻呼吸が苦しくて口呼吸になるほどですから、子どもが口呼吸をしてしまうのは当然のことです。

口呼吸の場合、原因は単純に悪習癖として口呼吸になってしまっている子と、鼻に疾患があり口呼吸になってしまっている子を鑑別する必要があります。

後者の鼻に疾患がある子どもは、アレルギーがひどいか、鼻の粘膜が慢性的に腫れているか、上顎洞という副鼻腔に炎症があるか、鼻中隔が湾曲しているか、アデノイドが腫れているか、扁桃腺が腫れていることが主な原因です。

これらの診断は必ずコンビームCTを見て評価を行います。ここで重要なのが気道が診断できるCT(コンピューター断層撮影装置)です。我々の法人には複数歯科医院がありますが、小児歯科医院には一番性能が良い気道の評価できるCTを入れています。

アデノイドや扁桃腺で気道が狭窄している子どもの場合、やはり姿勢を猫背にして気道を開く姿勢をとります。本来の理想的な姿勢でCTを撮影することにより気道の体積が狭いか、問題ないかを診断できるのです。

仮にアデノイド肥大や扁桃腺の腫脹や鼻の疾患がある場合は、耳鼻咽喉科に紹介状を書いて適切な加療をお願いしています。街の耳鼻咽喉科ではネブライザーという鼻を潤す機械を当てるか、薬を処方して終わりになることが多く、小児期の耳鼻咽喉科疾患に対して根本的な治療を行ってくれるクリニックは非常に少ない印象です。