「ゲイカップル」なのに結婚できた

【澤円】人生において幸せを左右する大きなテーマとして、結婚やパートナーと暮らすことも挙げられます。ドリアンさんは先頃、ネイリストのキラさんと結婚されましたが、同性婚が認められていない現状において、レアなケースとして話題になりました。

【ドリアン・ロロブリジーダ】わたしのパートナーはトランスジェンダー男性です。身体的な性としては女性として生まれましたが、いまは男性として生きていて、なおかつゲイです。ですから、見た目ではわたしたちは男性同士のゲイカップルなのですが、彼は戸籍上の性別を変更していなかったため、男女のカップルというかたちで現状のトラディショナルな婚姻制度にのっとって入籍をしました。

そこであえて「X(旧:Twitter)」で結婚報告をしたのは、世間に対しての問題提起のためです。世の中には、同性だという理由で結婚できないカップルがたくさんいます。わたしたちは入籍できるのに、何十年も連れ添っている男性同士、女性同士のカップルはそうできないのです。婚姻の平等がない現状について、「それはおかしいのでは?」と少しでも考えてもらうきっかけになってほしいという気持ちもあります。

写真=石塚雅人

【澤円】婚姻制度は法律で決められているものですが、法律は変えられないものではありません。現状に即したかたちでアップデートされてもいいですよね。

男女カップルでなければ幸せや愛情が生まれないなんてことはない

【ドリアン・ロロブリジーダ】法律は社会をいい方向で継続させるためのものですが、本来的には人が幸せになるために存在しているものだと思います。その幸せの価値観がどんどん多様になっているのですから、法律や婚姻制度などの仕組みもそれにアジャストしていく必要を感じています。

【澤円】いま、特に若い世代では結婚観の他に家族観も変わってきていますよね。家族観についてはどのような考えを持っていますか?

【ドリアン・ロロブリジーダ】同性婚について、「伝統的な家族観が崩れる」という理由で反対する人も多くいます。でも、そういう人がいう家族観というのは、僅かここ百数十年のあいだに生まれたものでしかありません。明治以降における、家父長制の側面がとても強い家族観を伝統的といっているだけなのです。

でも、人類の長い歴史から見れば、百数十年前にできたものを本当に「伝統的」といえるのでしょうか? ですから、今後も家族のかたちは変容を遂げていくでしょう。

それに、様々な家族のかたちがあるなかでなにより大切なことは、その家族を構成する人たち自身が幸せであることではないでしょうか。男女のカップルでなければ幸せや愛情が生まれ得ないなんてことはないですよね。

【澤円】本当にそう思います。