権勢を誇った「安倍・麻生体制」の崩壊
高市氏はもともと、解散するまでは安倍派であった党内の名門派閥、清和会に所属していたが2011年に退会。
理由は翌年の自民党総裁選で、当時の派閥会長だった町村信孝氏ではなく、安倍晋三氏を応援するためで、派閥に残るのは「不義理になる」と考えてのことだった。
一方で派閥に残って安倍氏を応援した議員も多数いたため、高市氏と清和会の一部議員との間には溝ができてしまった。
「2021年総裁選では安倍氏が高市氏の支援に動いたが、その安倍氏はもういない。さらに裏金問題を受けて清和会が解散するなか、保守系議員の票を完全にまとめることができなかったのだろう」(自民党関係者)
こうして新しく発足した石破政権では、高市氏に重職ではあるものの調整役で存在感が薄い総務会長のポストが打診された。しかし、高市氏は「私を支援した仲間を処遇してほしい」と固辞して政権と距離を取った。
一方で、高市陣営からの入閣や党役員起用は城内実・経済安保大臣くらいで、裏金議員の登用はないという前提を考慮しても保守系議員の冷遇が目立つ。
麻生太郎氏も最高顧問という名誉職に追いやられ、かつては権勢を誇った「安倍・麻生体制」が崩れ去ったことが伺われた。
なぜ石破首相は解散総選挙を急ぐのか
そんな石破政権だが、石破首相が総裁選では「野党と十分な論戦をしてから衆議院を解散すべき」と主張していたにもかかわらず、10月9日解散、15日公示、27日投開票という超短縮日程を強行しようとしている。
急な変節に野党からは「論戦から逃げた」(立憲民主党の野田代表)、「自民党を変える前に、石破さんが変わってしまった」(国民民主党の玉木雄一郎代表)と批判が相次いでいるが、なぜ石破首相はここまで解散総選挙を急ぐことになったのか。
新総理が誕生した勢いで解散総選挙に臨んだほうが自民党にとって有利となることや、10月27日に予定されている参院岩手選挙区補選で不戦敗となる前に選挙をしたほうが良いという考えなどが報じられているが、自民党関係者は「一番の理由は予算委員会での論戦をやらないためだ」と語る。