別件では「2980万円の詐取」を認めている

須藤被告は、すべてに完黙しているわけではない。別件で札幌市の男性(当時61)から約2980万円を詐取した件で訴えられているが、「私の体を弄ぶために払ったと思う」と、カネを受け取ったことは認めているのだ。

週刊文春(9月26日号)は、須藤被告の弁護側が「夫婦の性生活」にも言及したことを報じている。

「高齢の野崎さんは性的機能が不全の状態でした。何度も須藤さんと性交渉をしようとしましたが、勃起せず、挿入できません。それが三月下旬から四月下旬まで続きました。夫婦の交わりは、一度もありませんでした」(冒頭陳述より)

野崎氏が夫婦の営みを行えないことを理由に、須藤被告が離婚を切り出し、数億円の慰謝料を請求することもできたのではないか。

また週刊ポスト(10月4日号)は、須藤被告が結婚前に複数の高級クラブに登録し、デリヘルで働いていたこと、AVに出演していたことが冒陳で明らかになったことを報じている。

ポストはAV界のトップ男優で、須藤と共演したしみけん(45)にインタビューしている。

事前に書いてきた面接シートには、出演動機を「お金」と書いていたこと。群を抜いて奇麗なスタイルで、お尻から腰にかけてのくびれがスキージャンプ台みたいだったと話している。

並外れた精神力をもつ被告から真実を引き出せるのか

須藤被告がカネに執着するタイプの女性であることは間違いないのだろう。

須藤被告が身体を武器に、男たちからカネを巻き上げてきた“性悪”であることも間違いない。数十億といわれた資産目当てに野崎氏と結婚したが、離婚するといわれて殺しを計画したという“推理”も成り立たないわけではない。

だが、逮捕から初公判まで3年以上、拘禁状態を“耐え抜いた”須藤被告の精神力は並大抵のものではないはずだ。

強靭な精神力をもった被告に対して、検察側は、裁判員たちの“情”に訴えるのではなく、確たる証拠を呈示して有罪判決を勝ち取るべきであることは、いうまでもない。

須藤被告の弁護士が冒頭陳述でこう述べている。

「あやしいから、やっているに違いない。もし、そう思って結論が決まってしまうならば、この裁判をやる意味はありません」(朝日新聞9月13日付)

「その上で、『そもそも野崎さんの死は殺人事件なのか』『被告が犯人なのか』が争点だと指摘。『被告が人を殺す量(の覚醒剤)を飲ませることができたのか』といった点について、検察側が裁判で立証できたかを判断してほしい、と訴えた」(同)

私は、須藤早貴被告が真っ白無罪だと考えているわけではない。しかし、少しでもグレーな部分があり、検察側の主張に疑問があれば、刑事訴訟法の原点に立ち返るべきではないか。

この一見簡単そうに見える殺人事件の裁判は、検察官、裁判官、裁判員たちにとって厳しい判断を迫られるものになる。私はそう思っている。

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