快適な睡眠を得るには何をすればいいか。日本睡眠学会理事で医師の櫻井武さんは「寝室で眠れないという経験を繰り返していくと、寝室は“眠れない部屋”という記憶が無意識のうちにできてしまい、 “不眠の悪循環”を招く。ふだん23時に寝る人は20時から22時はもっとも寝られない。この時間にふとんに入るのは避けたほうがいい。」という――。
※本稿は、櫻井武『すぐに実践したくなる すごく使える睡眠学テクニック』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
1日のなかでもっとも眠れない「睡眠禁止帯」
「睡眠禁止帯」(Sleep Forbidden Zone)という言葉を知っていますか?
これは、1日のなかでもっとも「眠れない」タイムゾーンのことで、現代を生きる人にとって必須の知識です。
そのメカニズムを簡単に説明しましょう。
私たちが昼間は起きていて夜になると眠るのには、体内時計が関わっています。体内時計の働きのおかげで朝が近くなると、体のなかで覚醒、つまりは「起きている状態をつくる力」が大きくなります。
そして、夕方からどんどん「起きている状態をつくる力」が強くなり、ふだんの就寝時間の2時間前ごろにピークを迎えます。つまり日が落ちても、ある時間まで、体内時計は「眠らせない」リズムを刻んでいるのです。
起きている時間が長くなるにつれて睡眠圧は増えていきますが、体内時計は「起きている状態をつくる力」を高くして睡眠圧に対抗しているのです。
体内時計による「起きている状態をつくる力」は、起床後16時間を過ぎると弱くなり、私たちは眠りにつきます。
つまり、ふだん23時に寝る人なら、その直前の20時から22時くらいにかけては、「起きている状態をつくる力」がもっとも高い睡眠禁止帯で、1日のなかでももっとも寝られないタイムゾーンでもあるのです。