気候変動による水温上昇でサンマが寄り付かなくなった

サンマの不漁要因については、海水温の上昇といった海洋環境の変化や、他の浮き魚類(イワシ、サバ、アジ等、海面近くを泳ぐ魚)の出現、外国漁船の早期操業などいくつか挙げられているが、直接的な要因はわかっていない。

ただし、冷たい海水を求めるサンマだけに、地球規模の気温上昇という環境変化は大きなマイナス要素だ。

そもそもサンマが日本で秋の味覚となったのは、春から太平洋を北上し、水温の低下とともに秋から北海道・三陸の近海を南下してきていたため、たくさん獲れたことによる。

ところが海洋環境の変化に伴い、状況は一変した。同機構によると、「秋に千島列島に沿って北から冷たい海水を運んできた親潮が弱体化し、三陸沿岸を南下せずに大きく東へ蛇行してしまう傾向が強い」という。

その結果、ただでさえ数が少ないサンマがより東へ遠ざかって分散してしまい、余計に獲りにくい状況になっているとみられている。さらに、このところマイワシがそこへ来遊し、なおのことサンマを遠ざける要因になっているとされる。

外国漁船の影響については意見が割れる

このほかに、台湾や中国の超大型漁船が5月頃からごっそり先獲りしていることも減少の一因と見る向きがある。日本の研究者の中には「外国漁船が春に先獲りするサンマは、秋に日本が漁獲する群れにはならない」といった見方があるが、「不漁続きの中で影響がないわけがない」(漁業関係者)と疑問視する声も根強い。

いずれにせよ、近年不漁続きで精彩を欠いていると言わざるを得ないのはたしかだ。スーパーなどで見かけるのは、重さ100g程度、体長25cmを下回るような小さなサンマが焼かれて売られている姿。10年ほど前なら、30cmを超える脂たっぷりの太った生サンマが、特売時は1匹100円ほどで買えた。あまりに食べ応えがあって、1シーズンで2〜3回食べると「もうサンマも飽きたな」なんて冗談を言っていたころが懐かしい。

目黒のさんま祭で焼かれる小ぶりのサンマ(2022年10月)
筆者撮影
目黒のさんま祭で焼かれる小ぶりのサンマ(2022年10月)