「株の価値がなくなるのでは…」と疑心暗鬼に

2つ目の要因は「1株価値の期待値の減少」。価値自体が減少するのでは……? という恐怖に囚われてしまうことです。

先ほど、A社の株の価値は100円でしたが、そもそもなぜ100円なのか。これを算出するにはマルチプル法と呼ばれる考え方があります。

1株価値は利益と倍率の掛け算で計算します。例えば、A社の利益が1年当たり5円で、倍率が20倍だとします。するとA社の株の価値は5×20=100となります。これと株価を比べて割安かどうかを判断しているのです。

しかし株価が下がると、「このまま世界の景気が悪くなったら利益は5円以下、いや1円になるのでは……」と怖くなってくる。さらに倍率についても自信が持てなくなり、「15倍だったかな……」といよいよ疑心暗鬼に陥ってしまいます。

利益が1円で倍率が15倍と仮定すると、1株100円の価値だと思っていたものが15円の価値に思えてしまう。いったん株価が下がり始めると、その企業がどんな事業をしているのか、どんな商品を売っているのか、どんな強みがあるのか、自分で調べることなく買ってしまった株主たちが見通しを変えてしまい、さらにどんどん下がっていく。

このように「1株価値が減少する」という恐怖が連鎖していくことで、パニック寸前の状態になってくるわけです。

売りが売りを呼ぶ大パニック

3つ目は「売りが売りを呼ぶパニック」。もともと割高だった株価が是正され、さらに1株価値の見通しも下方修正され、その結果何が起こるかというと、これはもうパニックです。

ウォーレン・バフェットが“ミスターマーケット”と擬人化したように、株式市場をひとつの人格として捉えるとイメージしやすくなります。ミスターマーケットは、基本的に楽天家なのですが、時々、ヒステリックに「世界が終わる!」と喚き散らすほど悲観的になります。

8月5日の暴落がまさにそうでしたよね。

なぜこのような乱高下が起きるのか。その要因は人間の心理にあります。