話題になった小泉進次郎氏の“切り返し”

現代のメディア環境において、新聞記者という仕事というのはつくづく損である。そんなことを思わされる“事件”が相も変わらず日常的に起きている。

直近で言えば、9月6日に行われた小泉進次郎氏の自民党総裁選への出馬を表明した記者会見である。「(小泉氏が首相になって)G7に出席されたら、知的レベルの低さで恥をかくのでは?」と問うたフリーランスのジャーナリストの質問が大きな話題になった。

自民党総裁選への出馬について記者会見する小泉進次郎元環境相=2024年9月6日午前、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
自民党総裁選への出馬について記者会見する小泉進次郎元環境相=2024年9月6日午前、東京都千代田区

彼はかなり批判的な意図を持って質問したのだろうが、小泉氏が自身の至らない部分をはっきりと認めた上で「足りないところを補ってくれる最高のチームをつくる」とあっさり切り返されて終わり、この返答が大きく報じられた結果、小泉氏の好感度はかなり高まってしまった。普段、自民党や岸田文雄政権に批判的な人々も含めて、多くが小泉氏のやりとりを評価していた。当たり前のことである。

彼は鋭く切り込んだつもりだったかもしれないが、好感度が上がるような好アシストをしたにすぎない。ここで重要なのは、一時のこととはいえ件のジャーナリストもまた“勝者”になったことだ。

悪名は無名に勝る――。10年代以降のポピュリストたちは炎上騒動も知名度を上げるものと捉えていたが、その流れはメディアにも押し寄せている。