株価が下がる要因はあるが、上がる要因はない

日銀は、2023年には、上場投資信託(ETF)の売り手に回ったようだ。これも、株価には、マイナスの影響を与えるはずだ。新NISAは、これまでもあったNISAを少し拡張しただけのものだ。それに株式投資については、もともと分離課税を適用できる。

2024年の春闘で経済のムードが変わるという意見もある。しかし、そうした見方に根拠がないことは、『アメリカはなぜ日本より豊かなのか?』第4章で論じる。

野口悠紀雄『アメリカはなぜ日本より豊かなのか?』(幻冬舎新書)
野口悠紀雄『アメリカはなぜ日本より豊かなのか?』(幻冬舎新書)

このように、株価が下がる理由はいつでも見つけることができるのだが、上がる理由を見つけることができない。「株価がここまで上昇すれば、バブル時の最高値まではいずれ到達するだろうから、そこまでは安全」という考えがあるのだろうか?

こうしたことから、株価が経済の実態と離れているので、現在の状況はバブルではないか、との意見がある。確かに、根拠のない投機によって株価が上がっている可能性は高い。

しかし、バブルとは、経済の実態が変わらないのに、将来に対する期待が膨れ上がって資産価格を押し上げるというメカニズムが自己増殖的に拡大していくことだ。それは、通常、ユーフォリア(過度の楽観、市場全体が熱に浮かされている状態)を伴う。

ただ、いまの日本にユーフォリアというべきムードはない。その意味では、いま生じていることは、バブルとは言えない。少なくとも、1980年代後半に起きたようなバブルではない。

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