「睡眠負債」は返せても、睡眠の貯金はできない

週末の寝だめはスッキリ目覚めるどころではないのです。寝だめしすぎて調子悪いって多くの人が言いますけど、あれは寝すぎたことが問題なんではなくて、自分で作り上げた「時差ボケ」が問題なんです。

「週末に10時間も寝てしまった」という人がいますが、10時間眠れるっていうのは、それだけ「睡眠負債」が貯まっていたということなんです。寝だめで過去の負債を返している状態で、将来の睡眠時間を貯めているわけじゃないんです。人間は睡眠が充足していると、それ以上眠ることはできません。

それでも、抱えた睡眠負債を週末に少しでも返すことは意味があります。休日に寝だめする場合は、睡眠中央時刻をあまり大きくずらさないように注意してください。

「好きなだけ寝てみる実験」の驚きの結果

――自分では気づかないけれど、実は睡眠不足ということもあるのですか。

十分眠れていると感じている若者でも、実は潜在的な睡眠負債を1時間ほど抱えていることを示した、おもしろい実験結果があるんです。

健康な20代の若者30人を対象にした実験で、初日に普段と同じ睡眠時間の7時間25分ほど寝てもらい、次の日から、9日間眠れるだけ眠ってくださいという実験を行ったんですね(図表1)。すると、1日目は10時間半以上眠るんです。これは、負債を返している状態です。

十分眠っているつもりの若者なんですけど、実は7時間25分では睡眠が足りないんですね。あくまでも30人ほどの平均結果です。

だんだん2日目、3日目になると、睡眠時間が一定に落ち着いていって、4日目になると、8時間25分以上は眠れない。長く寝てくださいって言っているけど、もうこれ以上は眠れない。完全に睡眠が充足した状態になる。

【図表1】自覚的には充分に眠れている健康な若者の睡眠負債は平均1時間で、それを完済するのに4日かかる

何を意味しているかというと、睡眠不足を自覚していないということ、そして、重要なのは、1時間の睡眠負債を完済するのに、3日、4日はかかるということです。つまり、週末の1、2日の寝だめでは、負債は全部は返せない。そして、睡眠の貯金はできないっていうことなんです。