日本人の4人にひとりが「インポスター症候群」

あなたは、「インポスター症候群」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

インポスターとは、「詐欺師」や「ペテン師」のこと。

優秀で社会的にも成功しているのに自信がもてない。実力や実績は周囲から認められているにもかかわらず、自分の能力のなさがいつかバレるのではないかと常に恐れている。そんな一連の症状を指します。

この「インポスター症候群」をベースにその気質がある方も含めて、本書では謙遜さんとお呼びしています。

この症候群は、周囲からみたらハイスペックで、きわめて優秀な人に多いのが特徴です。学歴も高く、キャリア的にも周囲から憧れられる地位を築いた人、それも女性に多くみられます。

最近では、映画『ハリー・ポッター』シリーズで有名なエマ・ワトソンやハリウッド女優のシャーリーズ・セロン、元アメリカ大統領夫人ミシェル・オバマなどが、この症状だったと公表して話題になりました。

古くは、夏目漱石やアインシュタインも「自分に自信がもてない」と周囲にもらしており、インポスター症候群だったのではないかともいわれています。

2024年2月に行われたミラノファッションウィークに登場し、会場に集まったファンに向けて挨拶するエマ・ワトソン
写真=©Cinzia Camela/LPS via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ
2024年2月に行われたミラノファッションウィークに登場し、会場に集まったファンに向けて挨拶するエマ・ワトソン

丸の内・大手町に勤める会社員の半分以上が当てはまる

また株式会社ヴィエリスが2021年に発表したデータでは、丸の内・大手町に勤める会社員男女各110名のうち、インポスター症候群の症状に当てはまる人は、男性の約半数、女性の6割にものぼったそうです。

自分のことをインポスター症候群だと自覚している人は、男性が5人にひとり、女性は3人にひとり。男女合わせれば、4人にひとりでした。

意外に多いと思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

それだけ謙遜さんは、隠れているのです。

もちろん、これは大人に限った話ではありません。

先生、どうか皆の前でほめないで下さい いい子症候群の若者たち』(2022年・東洋経済新報社)の著者である金間大介先生も、「現在の大学生の多くは、能力の面において自分はダメだと思っている。その心理状態のまま、人前でほめられることは、ダメな自分に対する大きなプレッシャーにつながっている」と語っています。

そして、ほめられた直後に、それを聞いた他人の中の自分像が変化したり、自分という存在の印象が強くなったりするのを、ものすごく怖がるといいます。

人前でほめられるのが苦手、むしろみんなの前でほめないでほしい。

みんなと同じでいたい……。昇進したくない。

そういったお話は、謙遜さんである患者さんからもよく聞くお話です。決してこれらの事例は珍しいことではないのです。

もしあなたが、周囲からは「すごいね」「成功してるね」といわれるのに、「自分は過大評価されている」と不安をもっているとしたら。あるいは、どんなにがんばって成果をあげても満足できず疲弊しているとしたら……。

その背景には、このインポスター症候群的な考え方が隠れているのかもしれません。