投資ファンドから引き継いだハウステンボスは、10年4月の新装オープンから月ごとの入場者数が一貫して前年を上回り、ずっと増収増益で11年3月を迎えました。ところが東日本大震災の影響で3月の集客はマイナス20%、外国人客は激減、キャンセルは一気に1万件も出ました。この1年間で外国人客が50%以上も伸びていただけに大きな打撃でしたが、それでも11年4月の中間決算では、1992年の開業以来初めて本業のもうけを示す営業損益で黒字を達成しました。さらにゴールデンウイークには入場者数が前年比で36.8%と大幅に増加しました。
こうした結果を出せたのは、いち早く営業戦略の見直しができたからでしょう。震災前は全体の約2割に達していた海外からのお客様は短くて3カ月、長ければ6カ月は来場しないと外国人客に見切りをつけ、国内向けに反転攻勢をかけました。言うまでもなく戦略を変更した大きな理由は、福島第一原子力発電所の事故の先行きが不透明な中、海外からのお客様は日本への観光をまだ「危ない」と見たからです。
かつてインドネシアのバリ島でテロによる爆弾事件が起きたときに日本人がしばらくバリへ行かなくなったことからもわかります。国内では震災後、ほとんどのテーマパークで入場者が3、4割のマイナスになっています。それでも私は、最近のハウステンボスの賑わいを撮影し「楽しさ、美しさ、安全」の面で正しい情報を海外に発信してきましたが、いつ戻っていただけるのか予測は立ちません。
そこで集客戦略を、それまでの海外のお客様や自粛ムードの中で減少している社員旅行などの団体のお客様は、しばらくいらっしゃらないとあきらめ、関西以西のお客様に注力することを決めました。特に被災地に近い関東以北からの集客は落ち込んでいましたから、九州と中国、四国、近畿に全精力を注ぎ、その地域のお客様がハウステンボスに足を運びやすいツアーを組み、イベントを国内のお客様に喜んでいただけるものに変えました。
こうした企画で集客の2割を占めてきた海外分の減少を関西以西からのお客様を2割増やすことで埋め、これに合わせて、海外営業の担当者の中から国内営業へ重点的に回す取り組みも進めてきました。震災後3週間でこのような体制に移行し、その結果、4月には3割以上売り上げが伸び、5月は5割ほど伸ばすことができました。HISも震災後のお客様の行動に合わせたスピーディーな対応で、3月の海外旅行の売り上げが日本一になりました。