あと4カ月なのに、いまだに9割の人が使っていない

最も重要かつ広く多くの人が知るべき政府がついている「嘘」は、マイナ保険証によって医療を受ける人に大きな便益がもたらされるという点である。

医療を受ける人にとっての便益とはなにか。当然ながらそれは人それぞれ。なにを便益と感じるかは異なるだろう。だがもたらされるであろう「不便益」は多くの人に共通するものだ。よってマイナ保険証導入によって、いかなる不便益がもたらされる可能性があるかを、まず考えてみよう。

あなたが医療機関を受診する状況をイメージしてみてほしい。どの医療機関でも、玄関をくぐっていきなり医師の診察室に入れることはない。まずは受付を済ませる必要がある。そこで健康保険証を提示して、保険診療を受けられる資格を確認する必要があるからだ。

現時点では、健康保険証を提示するか、マイナ保険証を使える医療機関ではカードリーダーでこれらの確認をおこなう。この2通りだ。

ちなみに厚生労働省の説明では、一般の人のマイナ保険証の利用率は今年の3月時点で5.47%。つまりマイナンバーカードを持っていながら保険証として使っていない人が9割以上もいるわけだ。さらに驚きなのは、マイナ保険証を普及させる側ともいえる国家公務員の利用率。これが一般の人とさほど変わらない5.73%という低率なのだ。

2通りで済む確認方法が、一気に9パターンに増える

各省庁別では、総務省組合の10.31%や厚生労働省第一共済組合の8.4%は例外的に高い数値で、外務省では4.5%、防衛省にいたっては3.54%と一般の人よりも低い。外交や防衛というセキュリティ重視の省庁で働く公務員ゆえ、メリットよりもデメリットを恐れているのではなかろうか、と勘ぐりたくもなる低さといえるだろう。

話を元に戻そう。健康保険証かマイナ保険証のどちらかという2通りで資格確認ができている現状が、今後はどうなるのか。それこそが大問題なのである。同書によれば「健康保険証廃止」によって、この2通りがなんと9通りのパターンに増えてしまう可能性があるというのだ。

①マイナ保険証+資格情報のお知らせ
②資格確認書
③マイナ保険証+資格確認書
④これまでの健康保険証
⑤パスワードなしの保険証用途限定のマイナンバーカード
⑥マイナンバーカード+マイナポータルのPDFの写し
⑦被保険者資格申立書
⑧スマホマイナンバーカード
⑨新マイナンバーカード

これらのそれぞれが、どういう場合に使われるかの詳細については、ここでは説明できないくらい複雑なので、ぜひ同書を参照いただきたいが、最も重要なのは、これほど多様なパターンがあった場合に、医療現場でなにが起きるかということだ。