今後、「西日本豪雨」の4倍の雨量が降る可能性
「真備緊急治水対策プロジェクト」のソフト対策のひとつがハザードマップの提供です。将来の気温上昇で今よりも増えた雨量ではどこまで浸水するのかを「想定最大規模」という表現にして、ハザードマップにして公表していることについては、『今すぐ逃げて!人ごとではない自然災害』(プレジデント社)の4章でも触れています。
将来想定される高梁川の最大雨量は、今の4倍程度になると想定されています。ですから、西日本豪雨では、真備町の浸水深が5メートル程度だったのですが、想定最大規模の浸水深は10メートルとなっています。しかし、今の堤防の高さが5~6メートル程度なのに、10メートルの水が来たら、堤防があろうとなかろうと関係なくなってしまいますよね。そうなると地域の人々は、ハザードマップを見て避難しようとは思わなくなってしまいます。
だって、自分のいる場所が10メートルも浸水するとは、さすがに思わないですもんね。かといって実際に10メートルも浸水するのなら、もう逃げる場所が近所になくなってしまうので、逃げる気は失せてしまいます。しかし、想定最大規模のレベルになることは現段階ではめったにありません。
わかりにくいハザードマップを見直す動きも
「想定最大規模の表示だけでは住民に誤ったメッセージが伝わってしまう可能性もあるので、ハザードマップでは想定最大規模で表示されていますが、確率規模に応じて、リスクが増えていくことがわかる表示になるような取り組みも行われています。たとえば、『50分の1程度の確率で降る大雨だとここまで浸水し、100分の1の確率で降る大雨だとここまで浸水しますよ』と表示しておくわけです。
そうすれば、10分の1の確率で降る大雨で浸水する場所は住まないほうがいい場所だとわかりますし、100分の1の確率で降る大雨で浸水する場所になってくると、人生で1回ぐらいあるかもしれないから、気をつけたほうがいいかもしれないということになります」(高梁川・小田川緊急治水対策河川事務所の初代所長を務めた桝谷有吾さん)
となると、やっぱりハザードマップは心構えとして活用しようということですね。つまり、「公助」「自助」の役割分担はこういうことです。水災害から生命を守るために行うとは、「知る」「備える」「行動する」取り組みです。
「知る」とは情報活用ですが、「公助」の国(国土交通省、気象庁)や自治体はリスク情報を揃え、リアルタイムで発信し、情報精度を高めます。そして、「自助」の自分、家族は、避難を判断するための情報を適切に取りに行き、危険がある間は変化を細かく観察し続けます。自分と家族がリスクのある土地に住む場合、本気で命を守るためにやらないといけないことは実にシンプルではありませんか。