食料自給率は90%以上
イスラエルは乾燥地帯といった制約に加え、隣国との緊張関係もある中で、食料の確保は死活問題であり、それを克服するために、国をあげて独自の農業技術を開発し、不可能と思われることを可能にしてきました。
イスラエルの食料自給率は90%以上。年間降水量が平均700ミリ以下、南部では50ミリ以下という過酷な環境を考えると、驚くべきものがあります。
イスラエルの高い食料自給率を支える要因は、ハイテク農業(アグリテック)です。
水再生技術で浄化した水は、飲用には適しませんが農業には利用できます。
生きるためとはいえ、砂漠で農業を行うことは困難を極めます。
気温は高く、湿度が低いこの地では、水はすぐに蒸発し、塩分が土中に蓄積してしまいます。水の利用効率が極端に悪いのです、その状況を打破したのが、1965年に開発された点滴灌漑という技術です。プラスチック製のパイプを通して、作物を育てるのに必要な場所だけに水を届ける技術は、蒸発を抑制し、利用効率を上げます。
さらには、届く水の成分まで管理できるため、塩害対策も容易。しかも、点滴灌漑は、ますます発展を遂げています。
肥料や農薬を水に入れて効率的に散布することもできる上に、インターネット経由で、どこからでも農地の管理が可能に。
広大な農地の広がるアメリカの大規模農家でも、イスラエルのこの点滴灌漑技術の導入が進んでいます。
日本が抱えるリスク
イスラエルのテクノロジーで管理する農業で生産された、主な農産物は、じゃがいも、トマト、ピーマン、かんきつ類、なつめやし等です。
そして、イスラエルから日本に輸出されている農産物は、グレープフルーツ・ポメロジュース、レモンジュース、オレンジジュース、生鮮・乾燥果実等のかんきつ類が上位です。
一方、温暖な気候、四季に恵まれ、水に不自由しない我が日本の食料自給率は2020年度で37%、2021年度で38%と、イスラエルと比べると驚くほど低い数値です。食材や食料は、日本で作るより外国から輸入した方が安いというのが理由です。
尖閣・台湾有事が起こると、台湾の南のバシー海峡の交易路が断たれます。
輸入依存度の高い日本へ向かうタンカーをはじめ、輸送船の経路も断たれます。その中には、天然資源や食料を搭載した輸送船もあることでしょう。
それらの船はというと、安全確保のために、台湾の東の太平洋を迂回して日本に向かうことになります。
日本に無事着いたとしても、迂回した分、輸送代が高くなり、また、戦争の危害が及ぶ恐れがあり、保険代も割増しになります。それらは物価高となって市民の食卓を直撃します。食料を手に入れることのできない国民が急増する事態となります。
軍事費増とともに、食料自給率を上げる政策と努力が早急に求められています。