超高速かつ低遅延でデータを転送できる

CXL=Compute Express Linkを直訳すると、“計算(演算)高速化リンク”だ。CXLは基本的にDRAMを縦に積み重ねることによって、データの転送速度を高めようとしている。CXLを“次世代HBM”とよぶこともある。

CXLは、HBMよりも多くの機能を持つことも特徴だ。その違いの一つは、使用目的が異なるチップ(演算やデータの保存や書き出しを行う装置)を、CXLは柔軟につなぎ(リンクし)制御することだ。

その上で一時的にDRAMに保存したデータを、GPU、CPU(中央演算装置)へ高速に転送する(超高速転送)。転送の指示から実際にデータ送信までの時間を抑える(低遅延)。また、転送の前後で、データベースの状態が変わらないよう管理する(一貫性の保持)。

現時点で、そうした機能をもつ装置をCXLと呼んでいる。歴史は比較的浅い。2019年、米インテルや韓国サムスン電子などの共同事業(コンソーシアム)として、CXL技術開発は始まった。コンソーシアムに参加する企業は、有効性の高いチップの制御の仕組み(プロトコル)を開発し、国際規格に仕立てようとしのぎを削っている。

今後の研究開発競争次第で、CXLに新たな概念、機能が付加される可能性もある。AI分野の成長で、半導体関連技術の向上が急速に進む変化の一つといえる。

後れをとっていたサムスン電子が気を吐いている

足許、CXL分野で先行しているのは韓国のサムスン電子とみられる。HBM開発で、サムスン電子はSKハイニックスの後塵を拝した。2013年にSKハイニックスは世界で初めてHBMの量産を始め、エヌビディアのリクエストに応えた。一方、現在、サムスン電子はエヌビディアのテストをクリアすることが難しいようだ。

ここへきて挽回を目指し、サムスン電子は矢継ぎ早にCXL関連の発表を行った。6月、米レッドハットと共同で、CXLを用いたサーバーを業界で初めて構築したと発表した。IBM傘下のレッドハットは、アマゾンなどが提供するクラウド・サービスや、企業が構築した既存のITシステムの併用(ハイブリッド・クラウド)のソフトウェア開発に強みを持つ。CXL技術でコストを抑えて、サーバーの性能を拡張する可能性は高まるだろう。