インテル、マイクロン、ファーウェイも動き出した

7月の説明会でサムスン電子は、従来のサーバーにCXLを導入するメリットを公表した。具体的には、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD、フラッシュメモリを束ねてデータ容量を大きくした記憶装置)の位置を変えず、メモリーの容量を増やすコンセプトも明らかにした。同社によると、理論上、CXLをサーバーに実装することで、無限大に容量を拡張できるという。

従来のサーバー構築では、CPUなど演算装置の規格に合うメモリー半導体の仕様が必要だった。ところがCXLを使うと、演算とメモリー装置の規格面の適合性など、制約条件は弱まるとサムスン電子は考えている。それは低コストのデータ転送や演算スピード向上を支え、AIなど計算技術の向上に役立つはずだ。

サムスン電子は、2027年頃からCXLの需要は本格的に表れると予想している。2028年の市場規模は、160億ドル(1ドル=147円で2.3兆円程度)になるとの予測もある。

対して、HBMの市場規模が2029年に80億ドル(1.2兆円程度)と予想されていることを考えると、CXLの成長期待の高さが窺われる。先行利得をめざし、インテル、SKハイニックス、米マイクロンテクノロジー、ファーウェイなどもCXLの研究開発、実用化に取り組んでいる。

高帯域幅メモリの概念
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日本の半導体産業にとってもチャンスである

7月、TSMCは回路の微細化などの前工程に加え、チップレットなどに重要な後工程で競争力向上を目指すと表明した。CXL開発に伴い、用途が異なる半導体を組み合わせ、特定の機能を発揮する“チップレット生産方式”に対する需要が増える展開を見越した戦略だろう。

従来、チップのケース封入などは、台湾のASE(日月光投資控股)などが担った。TSMCはエヌビディアなどの顧客企業や、日米のサプライヤーとの関係を活かし、後工程分野の需要を取り込もうとしている。TSMCなどの対日直接投資積み増しの観測も高まっている。

それは、わが国の半導体関連企業にとり、重要な成長機会になるはずだ。前工程で使われる半導体の部材や製造装置に加え、後工程に必要な封止剤、動線、研磨剤や装置など、わが国には関連分野で世界的競争力を持つ企業が集積している。世界的なCXL開発の加速で、わが国企業が持つチップ同士の配線、積層、封止技術などの需要は高まる。