地動説は科学的な見地からどのように立証されたのか。カリフォルニア大学バークレー校教授で理論物理学者の野村泰紀さんは「コペルニクスが唱えた地動説において、惑星の軌道は“円”だと考えられていたが、それでは地動説による予測結果と観測結果が完全には一致しなかった。そこに『惑星の軌道は円ではなく、楕円である』という『ケプラーの第1法則』を発見し、ニュートンにも大きな影響を与えたのが天文学者のケプラーである」という――。
※本稿は、野村泰紀『なぜ重力は存在するのか』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。
ニュートン力学に大きな影響を与えた天文学者
古典物理学の歴史は、ガリレオに始まり、イギリスの数学者で物理学者、天文学者のニュートンが完成させた「ニュートン力学」で結実します。ガリレオが重力による落下運動の法則を明らかにし、ニュートンが重力があらゆる物体に働く普遍的な力であることを明らかにしたのです。
ガリレオとニュートンの「スーパー巨人」2人だけを押さえておけばOK! と言いたいところですが、実際には、他にも物理学の発展に大きな寄与をした人物はたくさんいます。
ニュートンの紹介にいく前に、天文学の分野において、非常に大きな貢献を果たし、ニュートンにも大きな影響を与えたケプラーについても紹介しておきましょう。
ケプラーは1571年、ドイツの西南部にある神聖ローマ帝国の自由都市ヴァイル・デア・シュタットで生まれました。ケプラーが地動説と出会ったのは、大学時代のことです。
大学教授のミヒャエル・メストリンから、コペルニクスの地動説について教えられたのがきっかけです。ケプラーは、大学では神学部に進みましたが、卒業直前に大学の推薦を受け、修道院附属学校で、数学と天文学を教えることとなりました。
このことが、ケプラーを聖職者ではなく、天文学者へと導くきっかけとなります。