NATO同盟は弱体化、中東地域の混乱は続く
④戦略のないトランプ外交
第二期トランプ外交は、国際的関与が前提だった従来の米外交とは異なるので、「戦略性」を見失う恐れがある。トランプ氏は外交よりも内政、とくに自己の名誉回復に最大の政治的精力を傾注する可能性が高いからだ。
⑤NATO(北大西洋条約機構)同盟は弱体化?
トランプ氏の対露宥和政策でNATO同盟は弱体化し、欧州「第二冷戦」は西側の敗北となるかもしれない。
⑥混乱が続く中東地域?
中東では米国の軍事関与が一層低下するが、トランプ政権のイスラエル支持は変わらない。されば、ガザ戦争で窮地に追い込まれたネタニヤフ首相が復権する一方、米国との対決は不可避と覚悟を決めたイランが核武装に向かう恐れすらある。
⑦対中抑止が弱体化するインド太平洋?
インド太平洋方面では、同盟国を重視しないトランプ政権のもと、従来の同盟強化の議論に代わり、貿易戦争が再発する恐れがある。経済面、軍事面で米中間の緊張状態は続くだろうが、QUAD(日米豪印戦略対話)や同盟国との連携は停滞するだろう。
予測不能性が発揮される「中・露・イラン・北朝鮮」
【良いニュース】
①トランプ本人の経験の蓄積
さすがのトランプ氏も4年間、曲がりなりにも米国大統領職を経験している。生来の癖や性格は変わらないだろうが、大統領に就任した2017年当時ほど予測不能な統治は行なわないのではないか、という淡い楽観論もないわけではない。ただし、こればかりはやってみないとわからない。
②国民・スタッフのトランプ慣れ
仮にトランプ氏が変わらないとしても、トランプ氏の側近やスタッフの多くはトランプ式意思決定に慣れているはずだ。2017年以来、彼らの多くはトランプ氏の性格を逆手に取りつつ、米国にとって望ましい政策を不完全ながらも立案実行してきた。
③同盟国の巧みな対応
この点は米国の同盟国も同様に違いない。第一期トランプ政権発足以降、西欧NATO諸国はトランプ氏の言説に文字どおり翻弄されていた。当時は「日本の安倍首相はなぜトランプとウマが合うのか」とよく聞かれたものだ。彼らのトランプ「慣れ」の研究もかなり進んだに違いない。
④翻弄される中露イラン北朝鮮等
トランプ氏の予測不能性が最も発揮されるとすれば、むしろ中露など潜在的敵対国に対してではないか。とくに、これらの国々が国際政治上問題のある行動を新たに取った場合に、トランプ氏がいかに反応するかは、本人も含めて誰も予測できない可能性がある。