インタビューでわかる彼女の性格
この舞台に挑む小池がインタビューでこう答えている。
『これまで「仕掛ける役」が多かったせいもあり、人の芝居を受ける難しさを痛感しています。でも新しいことに挑戦させていただけるのは有り難いことですし、KERAさんは、私に瞳ができると信じて書いて下さっているはず。舞台の稽古をしていると、今のように悶々とした日々の先に、バラバラだったピースが急にはまり出す瞬間があるんです。その時に備え、諦めずにもがき続けなければ。ただ、毎晩のように悪夢を見るんですよね(笑)』
つかみどころのない役へのストレスとプレッシャー。女優・小池栄子の根が真面目であり、数多の手練れからシビアに鍛えられていったことがわかる文言だし、彼女のピースがはまった舞台でもあった。
演劇人から鍛えられた芝居の筋肉を、小池はドラマではどう発揮していったか。
若い頃はステレオタイプな強気で勝気な姉御肌役をこなしていたが、そもそもの小池の特性、明瞭で知的な物言いと冷静さが映える、「やり手のインテリ女性役」が増えた。
「カンブリア宮殿」の影響
「リーガル・ハイ」「リーガルハイ」(2012・2013年、フジ)では性悪で陰険な弁護士(生瀬勝久)の敏腕秘書役、「ヘッドハンター」(2018年、テレ東)では、少数精鋭ヘッドハンティング会社の主人公(江口洋介)を敵視する大手転職斡旋会社のシニアバイス役。慶應大卒、アメリカでMBA取得、そして最年少のシニアバイスという華々しい経歴の持ち主だ。
「競争の番人」(2022年、フジ)では、優秀で変人扱いされる主人公(坂口健太郎)が勤める公正取引委員会の主査役。人の心を開く聴取が得意だが、過去の失態に罪の意識をもっている。
クールなビジネスパーソン役が続いたのは、テレ東でビジネス番組に出演するようになったからか。
三谷幸喜の映画「記憶にございません!」(2019年)では総理大臣の事務秘書官役、無駄に色っぽいが、たとえセクハラをされても拒まず、逆にその相手に無言の圧をかけて虚無を感じさせる女。全身どこもかしこも立体的な小池が圧をかける構図は面白い。
また、「罪を抱える女」としての説得力もある。湊かなえ原作の「贖罪」(2012年、WOWOW)では、幼い頃に少女殺害事件を目の当たりにして、被害者の母親(小泉今日子)から贖罪の意識を強く植え付けられた小学校教師の役。
四角四面で他人にも自分にも厳しく、1ミリも笑わない鉄仮面ぶりだが、あまりにも悲しい結末を迎える不運な女だった。蒼井優、安藤サクラ、池脇千鶴と並んでもひけをとらない、確固たる女優の地位を築いた印象が残った。